10秒の差

 

朝、
サイフォンでコーヒーを淹れて飲むのを習慣にしています。
沸騰させたお湯をフラスコに注ぎ、
それからアルコールランプに火をつけ、
さらに過熱。
ブラジル産の豆を定番にして、
もうひとつは販売店おススメのもの。
ふたつをブレンドして飲むのがたのしみの一つ。
ブラジル産のはだいたい中深煎り。
もうひとつの豆が深煎りの場合、
アルコールランプの加熱時間は70秒と決まっています。
決まっています、というより、
その時間にようやく落ち着きました。
学生のときの習慣を思い出して再開したころ、
いろいろ試してみました。
豆を挽いたときの粒の粗さ、細かさとも関係しますし、
アルコールランプの芯の長さにも関係します。
とても微妙で、
試行錯誤の結果、最適の70秒が得られました。
それで全く問題なかったのですが、
コロナ禍のせいもあってか、
ちょっと気分を変えたいと思い、
もう一つの豆を、深煎りでなく、中煎り、または中深煎りにしてみました。
すると、
おなじ70秒の加熱ではどうも美味しくない。
さいしょ、
加熱時間が影響しているとは思いつかず、
ちょっと考えごとをしているうちに、
ストップウォッチの数字が70秒をとっくに過ぎていた。
あ、と気づいて、
すぐにランプをとり蓋をしました。
ロートからフラスコに落ちてきたコーヒーをカップに注ぎ、
こわごわ飲んでみたところ、
あ、
美味しい!
おいしいじゃないか!
10秒の差がこんなにも味に影響するとは。
ちいさな発見ですが、
こんなことでも一日の色合いは微妙に変化します。

 

・代掻きや地にも星あり大鏡  野衾