戸を出でず

 

『老子』に「戸を出でずして天下を知る」という言葉がありますが、
僕は
「戸を出でず、天下を知らず」(笑)という生活をしています。
朝からこの書斎というより書庫にこもって、
原稿を書きます。
思うように書ければ二百字詰めで三十枚。
平均で二十枚。
正月三が日は来客があるからお休みにするが、
あとは毎日スケジュールをたてて書いていきます。
出歩くのも、運動のため朝夕の郵便ポストへのつかいと、
月二回の診察だけ。
そんな生活をもう十一年以上続けているから、
疲れて大丈夫かなと思う時もありますよ。
(白川静『白川静 回思九十年』平凡社、2000年、p.143)

 

どれぐらいのスペースか分かりませんが、
白川さんにとって、
書斎兼書庫が無辺の世界であり、宇宙だったのでしょう。
うらやましい気もしますが、
とても真似できないなと思います。

 

・代掻きや空の鏡を研くごと  野衾