ストーブ

 

・車窓より秋の稜線波打てり

姪っ子の結婚式に参加するため帰省。
やはり秋田は寒かった。
この時期もはやストーブ無しでは居られません。
早朝、
灯りをつけ、
ストーブの火を点し、
それでもしばらくは部屋が暖まらぬため、
丹前を着込み、
さらに毛布を体に巻きつけ、
どっこいしょ。
万全の態勢にてソファの上に胡坐をかき、
持参した本のページを開きます。
中学時代からの変わらぬ姿勢。
車の音は聞こえず。
なんとも静か。
静か過ぎてうるさいぐらい。
ボーンボーンボーンボーンボーン。
そろそろ母の起きてくる時刻。
やがて。
「おはよう」
「おはよう」
それからしばらくして父。
「あいかわらず、はやな」
「おはよう」
夜はまだ明けず。
*
九月二十日東京堂書店にて行われた対談の後編が、
図書新聞に掲載されました。
コチラです。

・ふるさとを超えて寂しき秋の空  野衾

きんき喰いてぇー

 

・思い出はきんき塩焼き一関

海のサカナで一番好きなのがきんき。
川魚では鮒。
いずれも、
焼いても煮ても美味しいわけですが、
秋田の母は、
薄く塩を振って焼いてから
煮ます。
こうすることにより
焼きの香ばしさがサカナに加わり、
一段と旨みが増します。
なんでいきなりきんきかというと、
『日本の七十二候を楽しむ 旧暦のある暮らし』(東邦出版)
の今日の日をふくむ候のページに
出ていたからです。
この本、
売れてもいるようですが、
とてもいい本です。
文:白井明大(しらいあけひろ)
絵:有賀一広(あるがかずひろ)
文章が簡潔で分かりやすく、
季節のものへの深い情愛が感じられます。
絵は水彩で、
四季折々の花鳥風月を
慈しむように描いています。
わたしの句作の種本でもありまして、
うんうん唸って
それでもなんも出てこぬときは、
この本を開きなにかヒントはないかと探します。
ぱらぱらページをめくっているうちに、
ん!
となればしめたもの。
ならぬときは大変。
カーテンを開け外を眺めたり、
立ち上がって狭い部屋をうろうろしたり。
でもって最初の句。
一関の富澤さん。
あそこのきんき焼き定食というものは、
日本最高だと思います。
また行きたい!
*
姪の結婚式で秋田に帰ることになりました。
そのため、
来月四日五日の「よもやま日記」はお休みします。
よろしくお願いします。

・ゲラの字や肛門宮度に染み入りぬ  野衾

初恋の日

 

・歳時記を睨み句作や秋日和

今日十月三十日は「初恋の日」だそうです。
なんでかっていうと、
島崎藤村の詩「初恋」
が発表されたのが、
明治二十九年(一八九六)の今日だから。
島崎藤村にゆかりのある
長野県小諸市の中棚荘が決めたのだとか。
旅館が決めたか。
早いもん勝ち、
決めたもん勝ちの感がないでもない。
でも、まだ、
そうか、
藤村の詩「初恋」がねぇ。
今日だったのか。
と、
ほんの少しだけですが、
なにやらの感慨が湧かないこともない。
ところが、
今日はまた、
「たまごかけごはんの日」でもあるんだそうです。
ええええっ!!
平成十七年(二〇〇五)の今日、
第一回日本たまごかけごはんシンポジウム
が開催されたことに因み。
そう決めたのは、
島根県雲南市の「日本たまごかけごはん楽会」
「学会」でなく「楽会」
そうでしたか。
となると、
嫌いではなし、
晩はたまごかけごはんにするか。
痛風は大丈夫か?
一個ぐらいなら平気か?

・秋の日やヰ゛オロンてヴァイオリン?  野衾

西脇さん

 

・一行の詩を考えて秋酣

このごろは西脇順三郎の詩と詩論、エッセイ、
評伝やら西脇論まで含め、
西脇さんのものばかり読んでいます。
ポポイポポイと草木もなびく模様。
変ったところでは、
『西脇順三郎全詩引喩集成』これ凄い!
西脇さんがつくった詩に古今東西のどんな言葉が引かれ、
また一見そうと知れない字句が、
いかに自家薬籠中のものとなり、
西脇さんの詩に反映しているかを
細部にわたり
丹念に調べ上げたもの。
これなど、
遅ればせに詩を勉強したく思っている
わたしなどにとりまして、
替えがたく面白く感じられ
興奮しました。
西脇さん以外にも
こういうものがあると役に立つと思うのですが。
外国には割りとあるようです。
詩は感性で書く、
とばかりも言えなそうで。
というわけで、
ちょっとした西脇フリーク。
西脇さんは、
芭蕉にも興味を持っていたようですが、
西脇さんて、
外国へ旅した芭蕉みたい、
だんだんそんなふうにも思えてきます。
芭蕉がヨーロッパへ旅していたら、
なんて考えてると
楽しくなってきます。
奥の細道ならぬパリの細道とか。
こうなると、
エズラ・パウンド、T. S. エリオット、ジョイス、イェイツ
までのラインが近く太く
見えてき、
どんどん広がっていきそうな気配。
遅れてきた青年の個体発生は系統発生を地で行き、
せっかくだから初源の受精卵まで。
いや父母未生以前まで。欲張りか。
季節は秋。
さあ読むぞ!

・実ありて鐘鳴らずとも柿は食う  野衾

秋田さ

 

・なめこ汁ありて華やぐ夕餉かな

子どものころ、
かぞぐで秋田さ行ぐのがいぢばんの楽しみだった。
とうさん、かあさん、おどうとどいっしょに行った。
まだ自家用車が無ぐ、
汽車で。
四人がげのシートの窓際はおらどおどうと。
通路側がとうさんどかあさん。
国鉄の汽車のシートを下がら指でなで上げれば、
白い筋がでぎでおもしろがった。
何度でもやった。
まんぷくしょぐどうではラーメン。
木ノ内デパートのおぐじょうで遊んだ。
きょうはアノラックを買ってもらう。
おらは白いアノラックどバンド。
おどうとは白いアノラックどけり。
白いアノラックはめじらし!
そうやって出がげだものだった。
じいさんも、ばあさんも、いであった。
じいさん、ばあさん思えば、
なだ出でくる。
なんも、なあんも、しんぱい無がった。
んにゃ。
しんぱいはそれなりあったども…。
いまどなれば、
しんぱいまでかがやいで見える。
いまは、
くだらにゃぐはにゃども、
おどなの、
しなければいげないしんぱいが山ほど。
しんぱいごどをこなして日が暮れる。
じぇんこ、かへがねばダメだし。
じぇんこかへぐのたいへんで。
姪っ子のけっこんしぎによばれ、秋田さ帰る。
秋田さ。秋田さ。

・現実をシュルレアリスム強化され  野衾

キリコ展

 

・バス去りて路に一人虫すだく

好きなジョルジョ・デ・キリコの展覧会、
夫人の旧蔵品を中心に約百点、
その八割が日本初公開というので、
さっそく行ってまいりました。
まず。
キリコの顔ですが、
優しい目をしたハイデガーみたい。
垂れ目だし。
歯、イデ(痛)がー?
なんてあきた。
キリコキリコ。
霧子といえばフランク永井。
♪好きだか~ら とてもとてもとて~も♪
霧子のタンゴ。
どうも逸れるんシュルレアリスム。
画集で知っているだけの画がいっぱい。
これ知ってる。
これ知ってる。
これ知らない。
これも知らない。
これ知ってる。
………………
知ってるもの、
画集で見たことのあるものは
少なくありませんが、
印象はだいぶ違います。
色が素晴らしい。
色か。
形は捉えても色は真似られない。
現代の印刷技術をどんなに駆使しても、
たとえば〈噴水のあるイタリア広場〉
や〈吟遊詩人〉の
原画の色を再現できないのでしょう。
色が再現できないということは、
キリコの孤独を再現できないのでは?
色のない孤独はない。
*
キリコ展は十二月二十六日まで。
東京・汐留ミュージアム。
一般千円。
水曜休館(十二月三、十、十七、二十四日は開館)。

・キリコ展出でて汐留独りキリコ  野衾

虹の大和 飯島先生に

 

・寒いのでビルの饒舌果てもなし

やまとでなくTAIKA
遥かのものの連結
無限遠で交叉する
大謙は大和に通ず

生と死
二にして一

夢とうつつ
二にして一

自然と超自然
二にして一

男と女
二にして一

妻と愛人
二にして一
のわけないか

遊びと仕事
二にして一
であれば尚うれし

真面目と冗歌
二にして一?

言葉と物
二にして一への漸近線

詩と散文
二にして一

信仰と哲学
二にして一
もつと哲学を入れなさいといわれたJ・Nは詩人だつたが

聖と俗なら
二にして一
奈良の古い仏達の菊の香よ

根本と枝葉
二にして一
アスファルト上似非文化論を引き剥がす

恋と殺伐たる砂の日常楼閣
二にして一

対物一点 万物照応
初源の神秘へ
宇宙の息が劈くとき
神韻縹渺 神韻微妙
一息 いつそく
生命の機

宇宙の水溜まりを飛び越えた
北上川御堂《みどう》観音弓弭《ゆはず》の泉
ゴヤのファースト・ネーム
少女の名前は

・秋滑り五分遅れて新秋津  野衾