詩はいいな

 

・喜びて雨に流すや悲しみも

詩はいいな。
くどくど書いていないところが。
小説だと、
小説だから、
何がなにして何とやらと
説明しなければならない。
説明できているうちはいいけれど、
説明できないことだってある。
人に告ぐべきことの適わぬこともある。
好きなまど・みちおさんの詩に「どうして いつも」がある。

太陽
月
星

そして
雨
風
虹
やまびこ

ああ 一ばん ふるいものばかりが
どうして いつも こんなに
一ばん あたらしいのだろう

*****

詩はまた一つ一つが短いから、
引用するのに楽でいい。
スッと気持ちが添う。
無理して立って歩いて
要らぬことでも話してみた り
ときどきは
ぎごちなくなら ぬよう
笑ってゐる
梅雨の晴間の 月がぽっかり
でておりました

・しぐれゆく苦渋六月あと五日  野衾

詩ってなんだろう

 

・この時期を年に一度の蝸牛

っていう谷川俊太郎さんの本があります。
詩が分からない詩が分からないって子どもの頃から
言ってきて、
念仏のように唱えたりするふうで、
あんまり言い過ぎると、
過ぎたるは猶及ばざるが如しってこともあるし、
謙虚なフリして
慇懃無礼ってことにもなりかねない。
が、
それでも、
大人になっても分からなくて、
いつの頃からかは、
ワカリマシェ~ンって
開き直った具合でもありましたが、
気がついてみれば、
このごろ詩や詩論ばかりを読んでいる。
詩ってなんだろう。
谷川さんの本の「文庫版へのあとがき」に
こんな言葉がありました。
「……始めのうち生徒たちは戸惑い、恥ずかしがることが多いのですが、
〈私〉の世界よりもはるかに広く深い〈言語〉の世界に気づき、
自分の内部と同時に外部に言語を意識するようになるとき、
単に詩とは何かを知るだけでなく、
彼らは言語というものの働きの根本に触れることになる
のではないでしょうか。……」
合点がいった。
もこもこ醸成されてきた気が落ち着いて。
ああ、
〈私〉の世界に飽きたんだなと。
自分もふくめこの世は〈私〉で混雑し、
行き惑い、
また生き惑い、
息苦しくなっている。
ああ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だよー。
嫌と思うのもまた〈私〉だけれど、
〈言語〉もまた嫌と感じ思っているに違いない。
そう思って〈言語〉の世界、詩を眺めると、
ふ~と息が深くなる気がする。
もう〈私〉はいい。
若いときの感性なんて、
だれだってキラキラしている。
要るのは私でなく詩であったか。

・蝸牛先祖は遥か海の中  野衾

写真集『石巻』進行中

 

・梅雨晴れて一葉しずくの光りあり

2011年3月27日から2014年5月29日までの三年間、
写真家の橋本照嵩さんは
石巻を撮りつづけた。
石巻は橋本さんのふるさと。
この三週にわたって土日をつかい
約二万カットのラッシュを見た。
橋本さん、社のKさん、武家屋敷、
わたしの四人でパソコン画面に向かいながら、
一枚の写真に釘付けになったり、
目頭を熱くしたり、
思わず大笑いしたりと、
こんなに楽しい編集はめったにあるものでない。
体は疲れているはずなのに、
越えて元気になっている自分に気づく。
二万カットのなかから
三百カットをピックアップ。
編集は頭でもするものだけれど、
橋本さんの写真を編集するには、
体が、無意識がはたらいていないといけない気がする。
なぜなら、
橋本さんの写真には
意識下の無意識が写っていると思うから。
それはまた橋本さん自身が
無意識を開放しつつ
シャッターを切っているからだろう。
たとえばしばしば現れる公園の松。
龍のかたちによく似ている。
震災の被害に遭い枯れてしまった松を、
橋本さんは何度も何度も足を運んで撮っている。
ラッシュを見ながら、
自分でも、
また撮ってるねー、なんて驚いている。
まるで他人事みたい。
撮っているというよりも
撮らされているのかもしれない。
幼子を亡くした母がチェックのシャツを着て立っている。
一年後、
追悼の会に赴いた橋本さんが撮った写真の中に、
見覚えのある女性が写っていた。
ひょっとして一年前の若い母親?
前の写真に比べ表情が少し和らいでいるか。
チェックのズボンを穿いている。
この人はきっとチェック柄が好きなのだ。
事ほど左様に、
見れば見るほどいろんなことに気づかされる。
祈りの深さ、激しさ、厳しさも。
わたしも最後まで開放のまま、
写真集の形にしたい。

・梅雨なれば夢も梅雨にて泣きにけり  野衾

 

再会

 

・無我唱ふ寺に基督奥邃忌

昨日は新井奥邃先生記念会。
『奥邃論集成』を担当してくれているSさんと
二人で参加。
豪雨にたたられ、
急遽予定を変更し墓参は後回し。
会場の北沢タウンホールへ。
遠くは仙台、新潟からの参加者もあり、
いつもながらの清新の気に触れる。
墓参と昼食をはさみ、
お二方の講演を聴き午後四時半に散会。
会場を出、
Sさんとマジックスパイス通称マジスパへ。
久しぶりのスープカレーのチキンを堪能。
店を出るや雨はすっかり上がっている。
小田急線で帰るSさんと駅で別れ、
わたしは井の頭線で渋谷へ。
程なく渋谷駅到着。
渋谷か。
用事があればともかく渋谷へはめったに行かないと、
新明解国語辞典「ともかく」の項目の例文にでている渋谷に
ひさびさに来、ふと思い出した。
昨年十二月いっぱいでキーコーヒー横浜駅地下店を辞し、
東急渋谷地下店へ移動になったDさんのことを。
疲れてはいたけれど、
用事があればともかくめったに来ない渋谷なれば、
思い出していながら、
黙って帰るわけにはゆかぬ。
地下へ降り、
キーコーヒーのお店を探す。
デパ地下特有の匂いにげんなり。
キーコーヒーキーコーヒーキーコーヒー…と。
お、案内図。
キーコーヒーキーコーヒーキーコーヒー…と。
あった!
つつ、つ~いと歩いたよ。
へへ、キーコーヒーと書いてあるじゃん。
あってよかった。
DさんDさんDさんDちゃん。
ん!? ん!?
おねえさん、ちゃうなあ。顔ちゃう。
Dさん休憩か? シフトで今日はお休みか?
はたまた…?
あのおねえさんにDさんいるかと尋ねるか?
変なオヤジに思われないか?
思われるだろうなあ。
ま、しょうがない。
帰るとするか。
一刻も早く外へ出ようと、
目に付いた出口からJRの改札へ向かう通路へ。
やれやれ。
えーと、JRJRと。あったあった。よし。
「みうらさん!」
「……」
「やっぱり」
「お。Dさん! いま、店に行ってきたところだよ。辞めちゃったのかと思った」
「辞めてない。嬉しい! ほんとに来てくれたの。嬉しい!」
「よく俺だと分かったね」
「休憩から戻ったら、横顔がなんだか見覚えがあると思って、
おねえさんに知ってる人かもしれないからと断って追いかけてきたんだ」
「そうかそうか。よく声かけてくれたね」
「嬉しい! 嬉しい!」
「つけまも元気だね」
「そうだよ。これないと人前に出られない」
「あははは…。そう言ってたね」
※@♀♂&#$★¥△£§∞≧>∈▼∴$℃▲■◎○☆
「じゃ、またね。元気でね」
「三浦さんも」
「バイバイ」
「バイバイ」

・雨上がる半年前のつけまの娘  野衾

BABYMETAL

 

・梅雨の朝クラムボンなる心地せり

おもしろそうなので、
BABYMETALのファーストアルバム『BABYMETAL』の
まずはDVDを拝見。
十代前半の女子三人が汗びっしょりで歌い、跳ね、踊る。
かつてキヤノンのテレビコマーシャルで、
外国人の子どもたちが
キッスの“I Was Made For Lovin’ You”
を真似て歌う、
たしかEOSだったと思いますが、
そういうCMがありました。
キッスがヘビーメタルかそうでないか
の議論はひとまず措いといて、
あれの女子版かなと。
バックを務めるお兄さんたち、
あるいはおじさんたちの音がしっかりしているので、
可愛い女子三人組がどんなに跳ねて踊っても、
安心して見ていられる、
聴いていられる。
きゃりーぱみゅぱみゅ好きのわたしとしては、
やっぱりきゃりーがいいや
と内心思いつつ、
最後まで見たということは、
この子たちのことも好きなのかもしれないdeath。
今度、レディー・ガガのツアーで前座を務めるのだとか。
ガガ様からオファーがあったそうdeath。

・つゆなれどかぷかぷかぷかだいぜうぶ  野衾

梅雨晴間

 

・詩を読みてすがる言葉や夏の海

東京学芸大学へ行ってきました。
遠かったー!!
武蔵小金井は遠い。
そこからまたバスだもの。
先生の研究室前で
会社の二人と待ち合わせをしたのですが、
余裕をもって会社を出たのに、
余裕をもちすぎ、
約束の時刻を五分ほど過ぎてしまいました。
無事に打ち合わせを終え、
正面玄関をでたところにあるバス停へ。
Kさんはさらに営業のため他の学部棟へ。
バス停に着くや専務イシバシが
バッグからおもむろに銅鑼焼きを。
半分にし、わたしに大きいほうをくれた。
「なにこれ?」
「銅鑼焼き…」
「見れば分かる。なんでこれ持ってるの?」
「昼ごはん食べなかったから」
「ふーん。ありがとう」
二人ぽけーと、銅鑼焼きを頬張っていると、
「バスなら、こちらですよ」
ん!?
見遣れば、
色の白い美しい少女。学芸大の学生さんかな…。
「ありがとうございます」
バス停の支柱のある場所は降り口で、
そこから三メートルほど離れたところが乗り口らしく、
そのことを教えてくれたのだ。
わたしたちが移動するのを見越し、
そのスペースを空け、すっと立っていた。
立ち姿がなんとも美しい。
このごろの、
黴の生えたような気分が
一気に晴れていくようでした。
駅前でバスを降りると、
彼女もそこで降りてきました。
目の前を彼女が通り過ぎるとき、
目礼すると、
彼女もわずかにお辞儀をし、
駅のほうへ向かって歩いてゆきました。
こんなこともあるものだと、
いい気分になってゆっくり歩き出しました。

・外れ無く天に軌道のある如し  野衾

Ⅰくん

 

・梅雨の朝バナナとたっぷりヨーグルト

高校二年のとき、
同じクラスにⅠくんがいた。
髪を肩まで伸ばし、
上は学生服、下はジーンズ、
(服装なんでもOKな学校だったので、
Ⅰくんだけでなく、
当時、そのスタイルで登校する生徒が多かった)
痩せてしなやかで、
鞭のようなⅠくんは、
雰囲気が、若いときの沢田研二にちょっと似ていた。
遊び人風のⅠくんはよく学校を休んだ。
喫茶店に入り浸っているだとか、
年上の女性と付き合っているという噂を耳にした。
真偽のほどは分からないが、
どちらでもよく、
とくに興味はなかった。
校舎の裏で煙草を吸った数名が停学を食らったとき、
Ⅰくんもその中にいた。
わたしとは住む世界が違う気がし、
大人びたⅠくんを仰ぎ見ていた具合で、
同じクラスでありながら、
わたしは一度もⅠくんと話したことがない。
勉強しているふうはないのに、
テストでは常に上位をキープし、
とくに世界史はいつも満点に近かったはず。
早稲田大学の政治経済学部に現役合格。
その後、
とんとⅠくんの噂を聞かなかったが、
陸上部でいっしょだった友人から先だって、
ずいぶん前にⅠくんが亡くなっており、
それも自死の可能性があると聞いた。
接点はなかったけれど、
学ランにジーンズ姿のⅠくんがときどき目に浮かぶ。

・六月を椅子に胡坐の読書かな  野衾