さいごに力を抜く

 

免許証の更新はつづけていますが、クルマを運転しなくなってからしばらく経ちます。
そのことを思い出したのは、タクシーに乗ったから
かもしれません。
自動車学校の教官に教わるだけでは足りず、
運転のコツを、
じぶんで、ああかな、こうかな、と工夫したことが懐かしい。
その中に、
停止の際のブレーキがありました。
クルマを停止させるときにブレーキペダルを踏み込みますが、
クルマがちゃんと停止するまでしっかり踏み込み、
そのままでいると、
ガタン!となってしまう。
さいごの最後、
もはや停まるか、停まるか、という瞬間に、ほんのちょっとだけ力を抜く。
と、ふわり、まるで雲に乗ったかのよう、
ガタンとならずに、スッと停まる。
コツがあった気がします。
電車のことは分かりませんが、
ハンドル操作になるのでしょうか。
電車も、スッと停まるときもあれば、ガタンとなるときもあります。
公田連太郎さんの『易経講話』を読んだとき、
動くものをちょうど真ん中で止めることは至難の技で、
というか、
実際には無理な話で、
どうやるかといえば、すこしだけ過ぎるところまで行き、もどって、
ちょうど真ん中に止まる、
その極意みたいなことが書かれていて、
感心したことを覚えています。
さいごに力を抜くのは、
それに近い工夫のひとつかなと。
ことクルマの運転に限った話ではないなあ、と、感じます。

 

・縫い目なしこの世の淵に散る落葉  野衾