月と月の歌

 

いつの間にか、十月も残すところ数日になってしまいました。
ことしは猛暑酷暑の記録的な年でしたが、
さすがに涼しく、
ときに肌寒くすら感じられるようになりました。
会社帰り、
保土ヶ谷橋から小路に入って、
えっちらおっちら、
階段を上りきり、ふと空を見上げれば月。
ああ、
と深呼吸、しばらくぼうっと見惚れることがしばしば。
月は春夏秋冬、
季節にかかわりなく年がら年中現れる
のに、
俳句的には秋の季語。
日本人が月といえば、春でなく夏でなく、
まず何といっても秋と関連付けて認識してきたのが分かる気がします。

 

『新古今和歌集』1538番の歌、

 

秋の夜の月に心を慰めて憂き世に年の積りぬるかな

 

藤原通経(ふじはらのみちつね)さんの作。
こういう歌を読むと、
千年も前の人だと思えないぐらい、近しく親しく感じられます。
月を見て慰められ、
また月を詠んだ歌を読むことで慰められます。

 

・秋の日の濃きより薄さありがたき  野衾