夢二さんと新古今

 

竹久夢二さんの作詞した歌に『宵待草』があり、
一番の歌詞をなんとなく憶えています。

 

待てど暮らせど 来ぬ人の
宵待草の やるせなさ
今宵は月も 出ぬそうな

 

これをふと思い出したのは、いま『新古今和歌集』を読んでいるからでありまして。
1283番、有家朝臣(ありいへのあそん)の歌。

 

来ぬ人を待つとはなくて待つ宵の更けゆく空の月も恨めし

 

宵待草は出てこないとはいうものの、
「来ぬ人」「待」「宵」「月」が重なります。
夢二さんの歌詞には、原詩があり、実体験を踏まえて作られたそうですが、
体験をことばに置き換えるときに、
読んできたものが不意に思い出されたり、
意識的に思い出し、
本歌取りすることは考えられます。
上のふたつ、
無関係ではない気がします。
それについて、
すでにちゃんと調べが付いていて、
単にわたしが知らないだけかもしれません。

 

・信号待ちいづ方よりの虫の声  野衾