詩人アウグスティヌス

 

さあ、できるならばふたたび見よ。君はたしかに善いもの以外のものを愛さない。
高い山、なだらかな丘、広大な平野のある大地は善い。美しく肥沃な農園は善い。
造りがよく広く明るい家は善い。活力ある身体を持つ動物は善い。
おだやかで健康に適した空気は善い。美味で身体のためになる食物は善い。
痛みと疲れのない健康な状態は善い。
形よく表情が愛らしく生き生きとした人の顔は善い。
甘美な一致と真実な愛を持つ友の心は善い。正しい人は善い。
富は貧困から脱するのに役立つので善い。太陽と月と星を持つ天空は善い。
天使の聖なる服従は善い。
やさしく教え、聞く人にふさわしい仕方で教え、心を動かす論談は善い。
リズムがあって想念が荘重な詩歌は善い。
これら以外に何かあるだろうか。
これも善い、あれも善い。
その「これ」を取れ、「あれ」を取れ。
そしてできるならば善そのものを見よ。
そのとき君は、
他の善によって善なる神ではなく、
すべての善の善である神を見るであろう。
(泉治典[訳]『アウグスティヌス著作集 第28巻 三位一体』
教文館、2004年、p.235)

 

アウグスティヌスは論理学が好きらしく、
かつまた得意でもあるらしく、
彼のものを読んでいると、
「ああ、もういいよ。わかったわかった、わかったから」
と、
辟易しがちになることが間々あります。
が、
引用したような文章がたまに現れ、
論理思考でヒートアップしたアタマが静かにクールダウンします。
この箇所には、
おそらく旧約聖書のコヘレトの言葉がひびいている
と思われます。

 

・花曇り日はあてどなく行き場なし  野衾