馬柵棒

 

万葉集の3096番

 

馬柵(うませ)越しに 麦食む駒の 罵(の)らゆれど なほし恋しく 思ひかねつも

 

訳は、

馬柵越しに麦を食む駒がどなり散らされるように、どんなに罵られても、
やはり恋しくて、思わずにいようとしても思わずにはいられない。

この馬柵について、
『萬葉集釋注』の伊藤博は、
「馬柵(うませ)」は筆者の幼年時代、
「馬柵棒(ませぼう)」「馬柵棒(ませんぼう)」の名で、信州高遠地方に残っていた。
(伊藤博『萬葉集釋注 六』集英社文庫、2005年、p.623)
と記している。
これを読み、
わがふるさとのことを思い出したので、
さっそく父に電話してきいてみた。
そうしたら、まったく同じ
「馬柵棒(ませぼう)」の名が父の口から発せられた。
アクセントが秋田風なことで、
はっきりと思い出した。
馬柵棒(ませぼう)はまた、
男子のズボンの小用を足す際に開ける口
についても用いられていたはず。
男子のアレもまた、
暴れ出さぬように柵をしておかねばならない
ということか。

 

・馬柵棒の外れて高し冬銀河  野衾