文学を知る

 

『中国文学雑談 吉川幸次郎対談集』(朝日新聞社、1977)のなかで、
作家の井上靖を相手に吉川はつぎのような言葉を発しています。

 

徂徠の根本は、人間はまず文学を知らなければ、
すべてがわからないというんです。
文学を知らなければ道徳もわからない、政治もわからない。
だから人間は文学をやらなければならない。(p.19)

 

文学とは、学問であり、
また学芸、詩文にかんする学術全般を指す言葉ですが、
いまは
それを学ぼうとする者、研究する者にとって
けしていい時代とはいえません。
が、
こういう時代が
そうながくつづくとも思えません。
まず文学を知らなければならないという吉川の言葉を肝に銘じ、
おおくのひとの知恵を拝借しつつ、
わたくしどもも知恵をだし、
協力し合いながら、
つぎの時代につなぐ本をつくりつづけたいと思います。

 

・新緑の風の来(きた)りて頬を撫づ  野衾