被ばく牛と生きる

 

・ツンドラの地よりここまで凍土踏む

 

すさまじいドキュメンタリー映画『被ばく牛と生きる』
福島第一原発の事故により被ばくし、
餓死した牛が1500頭。
殺処分された牛が1000頭。
殺処分の命令に従わず、
経済的には無価値となった牛を養い
共に生きようとする農民の姿を描いている。
牛飼いにとって牛は
自分のいのちと同等であることがひしひしと伝わってくる。
足尾鉱毒事件、水俣病などの公害を経てもなお、
権力構造は微塵も変わっていないと教えられる。
映画の最後ちかく、
がんばってきた農家のひとりは、
追い詰められ疲弊し、
二十数頭の牛を殺処分せざるを得なかった。
仮設住宅の前に立つ。
「もう、ごろごろして、テレビを見たり、本を読んだりするだけですよ」
の笑いが何とも切ない。
シネマジャック&ベティで二月二日(金)まで。

 

・冬晴れや富士を探して見晴るかす  野衾