・戯れて弟と来し花野かな

 

九月に入りまして、
夕刻ともなると、
虫の声があちこちから聞こえてきます。
が、
日差しの強い昼、
本町小学校のあたりでは、
アブラゼミでしょうか、
ものすごい力で鳴いています。
ほんとうに
最後の最後だと思いますけれど、
だんだん萎むようにというのでなしに、
その大音量に驚きます。
おなじ生き物でも、
目を閉じて
すーっと魂が消えてなくなると思えるいのちもあれば、
同じトーンで生きて
ぶちっと終るいのちもあって、
なんとも不思議。
でも、
待てよ。
ひょっとしたら、
いよいよのときは
蟬も声がちいさくなるのだろうか、
心してちゃんと聞く必要がありますが、
六十年生きていまだに
そういう場に立ち会ったことはありません。

 

・花野にてすることもなし帰りけり  野衾