由紀さおり

 

小学校の修学旅行は十和田湖でした。一泊二日だったのかな。
五年生までの日帰りの遠足とちがって、たった一泊でも泊りがけでの旅行だというので、
ちょっぴりおとなになった気分を味わってたような。
湖畔の像を見たり、奥入瀬の渓流沿いを散策したり、瞰湖台(かんこだい)から
十和田湖を一望したりと、修学旅行ならではの盛りだくさんの旅程でした、
たしか。
さてその思い出ぶかい修学旅行ですが、
宿だったか、バスのなかだったか、とてもきれいな澄んだ声の歌が流れていました。
なんてきれいで、はかなげな声なんだろう。
「はかなげ」ということばは、
もちろん当時まだ知らないわけだけど、
「はかなげ」ということばにふさわしいこころの感じわけだったとおもいます。
のちにその歌が「夜明けのスキャット」と知りました。
歌詞の意味は、それからずっと後になって知ることになりますが、
♪ルルルルル…で始まる美しいメロディときれいな声は、
わたしのなかでは、
瞰湖台から見たほのかに煙立つように見えた湖の姿、
奥入瀬のせせらぎに映るひかり、やさしげにたつ湖畔の像などとあいまって、
いまもリフレインされています。

 

・まばたきの刹那墜ちてか星月夜  野衾