二葉百合子

 

いま見なくなりましたが、わたしが中学・高校のころ、
自動車のなかで音楽を聴くのに、
割と大ぶりのカセットテープがあり、それをガシャッと機械にセットしたものでした。
家にラジカセもオーディオのセットもありませんでしたから、
じぶんの好きな音楽を聴くには、
父が運転する自動車のオーディオのみ。
オリビア・ニュートン=ジョンも、そういうかたちで聴きはじめたのですが、
同時に二葉百合子も。
「岸壁の母」は、菊池章子の歌唱が先ですが、
そのことを知ったのは、だいぶあとになってからで、
もっぱら聴いていたのは二葉百合子の「岸壁の母」でした。
そのころまさかじぶんが二葉さんご本人にお目にかかり、
インタビューすることになろうなどとは思いもしませんでした。
丹羽文生さんといっしょに、
いくつかのジャンルの人にインタビューし一冊にまとめたのですが、
二葉さんには、わたしがインタビューしました。
『情熱の素』(じょうねつのもと)という本になりました。
2005年8月の刊行ですから、
いまからちょうど20年前になります。
そのとき聞いた話で、印象にのこっているのは、
マネージャーをつとめている旦那さんが舞台のそでで聴いていると、
「岸壁の母」を年に何百回となく歌っても、
お、きょうは声が出ているな、いい感じだな、とおもえるのは、
二、三度くらいしかないのだとか。
旦那さんがそういうことを語っていたと
二葉さんからうかがいました。
なるほどなぁ、そういうものかもしれないなぁ、とおもいました。
二葉さんと同年齢の秋田の父も、
二葉さんの歌が大好きですとつたえると、
ニコッとされたのをなつかしく思いだします。

 

・新涼やふるさとさらに新しく  野衾