画眉鳥

 

休日の散歩コースに横浜市児童遊園地があります。まったいらでなく、
もともとの山の傾斜や樹木を生かした作りで、広々としており、
すがすがしい自然の気に触れることができます。
自宅から往復で1万歩弱ですから、
ほどよい運動になります。
せんだって家人とつれだち遊園地に向かいました。
寒桜はすでに満開を過ぎていて、
植えられた樹木や花々には説明のプレートがあり、たすかります。
下の広い平地に下りひと休み。
それから反対の丘に上り、
斜面を左まわりに歩いていくと、どこからかピーッ、ピーッ、ピーッ、
と鋭い鳥の鳴き声。
白髪の男性が立ちならぶ樹木を見あげています。
つられてわたしたちも見あげます。
「姿が見えませんねぇ」「そうですねぇ」「ウグイスと違うようですねぇ」
「そうですねぇ」
見ず知らずの男性とそんな会話をしていたとき、
うしろから「ガビチョウですよ」
と女性の声がした。
「大きな声でよく鳴くんですよ」「そうですか。ガビチョウ…」
声はすれども姿は見えずの文句どおりですが、
そのおかげで、
ほんの数分ではありましたが、知らぬもの同士の会話が生まれました。
こういうのも散歩の効用かもしれません。
そんなことがあってから数日後、
おとといのことです。
坂を上って自宅へ曲がったところで、ピーッ、ピーッ、
聞き覚えのある声。
ガビチョウ!
わたしの数メートル先、手すりの上にいるではありませんか。
うす緑色で、すこし茶がかっています。
ムクドリぐらいの大きさでしょうか。目の周りが白く、
それが、からだのうしろへスッと伸びています。
この鳥かぁ。しずかに一歩前へ。
まだそこにいます。そして、
トングみたいに口を開きピーッ、ピーッ、ピーッ!
ああ、やっと見れたぞ。
家に帰り、念のためパソコンで画像検索。
画眉鳥。

 

・ひつそりと小枝伸ばして桜かな  野衾