秋田県五城目町は、わがふるさと井川町のとなりに位置しています。
秋田市までは汽車を使わなければ行けませんでしたけれど、
秋田市に行かなくても、
だいたいの用事は、五城目町で済ますことができました。
五松堂という本屋があって、自転車に乗って、
そこを訪ねたこともあります。
一度は『自由自在』という参考書を買うために。
ぶ厚い参考書。が、
それで勉強した記憶はあまりありません。
母がわたしに買って与えた漱石さんの『こゝろ』も、五松堂で求めたのではないか
と勝手に想像しています。
五城目町では、有名な朝市があります。
1495年創始とされており、ことしで530年ということになりますから、
おどろきです。
子どものころ何度かおとずれ、なにを買わなくても、
そのたびに、
わくわくどきどきしたものでした。
見たり買ったりするだけでなく、
山菜採り名人の祖母は、採った山菜を朝市に持っていき、販売していたことも
あったはず。ネットで調べたら、
いまも朝市はつづいていて、五城目町に住む人は110円、
町外の人なら210円払えば出店できるそう。
祖母が山菜を売りに出していた当時は、どうだったのでしょうか。
そこまで祖母に聞いたことはありませんでした。
山菜を売ってどれだけ稼いだのか、
分かりませんけれど、
帰りにはかならず、大判焼きやシンプルな「おやき」を買ってきてくれた。
なかに入っているあんこの、なんとおいしかったこと。
山菜を売る祖母の姿をけっきょく見ずじまいになってしまいましたが、
ちいさい体をまるめて、
じぶんの前に採ってきた山菜をならべ、
きときと目を輝かせている祖母が目に見えるようです。
五城目町にはまた、
プラモデルを売っている店もあり、そこもたびたびおとずれた。
自転車でも行けるとなりの町なのに、
子どものわたしにとって、
たのしいわくわくがいっぱい詰まっている町でした。
・足下に小さき花火や紅の花 野衾