貝母という植物についての記述もあります。「ばいも」と読み、漢方薬のひとつで、
咳止め、痰を切る、止血、催乳、膿を出す、利尿、鎮痛など
の作用があるらしく。
そのため気管支炎、肺結核、せき、扁桃腺炎、腫れものなどの治療に用いられるのだとか。
そういうことがネットで検索するとでてくるのですが、
『和漢三才図会』には、それとはまたちがったことが書かれています。
貝母は悪瘡を治す。唐人はそのことを記して次のようにいう。
かつてある商人の左膊《かたほね》の上に瘡《かさ》が出て人面のようであった。
別に痛くはない。
戯れに酒を人面瘡の口に滴らすと、面は赤くなる。
物を食べさせると食べる。多く食べたときは膊内の肉が脹起し、
食べさせないと一臂《ひだりうで》が痺《しび》れる。
名医がいて、諸薬・金石・草木の類を試させたが、どれも瘡にはきかない。
貝母を使用すると、
人面瘡は眉をしかめ目を閉じた。
そこで小さな葦《よし》の筒でその口を毀《こわ》し貝母を注ぎ入れると、
数日で痂《かさぶた》となり、遂に癒えた。
けれどもこれがどういう病かよくわからない、と。
(寺島良安[著]島田勇雄・竹島淳夫・樋口元巳[訳注]『和漢三才図会 16』
東洋文庫、平凡社、1990年、pp.197-198)
人の顔をした傷口って、どうなんでしょう。ホラー以外の何ものでもないわけです
けど(これに似た話を漫画で見たような気もします)、
こういう記述にたまに出くわすことがあり、
やめられなくなります。
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さて、来週月曜日(30日)は都合により、「よもやま日記」をお休みします。
よろしくお願い申し上げます。
・ものみなが揺れて溶けだす溽暑かな 野衾