鎖陽について
江戸時代のいわば絵入り百科事典ともいうべき『和漢三才図会』でありますが、
平凡社の「東洋文庫」で18冊ありまして、
その16巻目を読了。あと二冊。ふ~
ところで、この本、
いたってまじめ、謹厳実直そのもののような書きっぷりでありまして、
それなのに、というか、だからよけいに、クスっと笑たり、
ときに爆笑してしまうこともあります。
『本草綱目』(草部山草類鎖陽〔集解〕)に次のようにいう。
鎖陽《さよう》(オシャグジタケ科オシャグジタケ)は粛州(甘粛省)や韃靼の田地
に生える。
野馬とか蛟竜の遺精が久しい年月を経て笋《たけのこ》のように
発起したものである。
上は豊《ふく》らんで下方はつつましい。
鱗甲が櫛《くし》の目のように並び、
筋脈は連絡していて男陽によく似ている。つまり肉蓯蓉の類である。
あるいは、
里人の淫婦がこれに就合し、一たび陰気を得ると勃然として怒長する、ともいう。
土地の人は掘りとって洗って皮を取り去り、
薄く切って晒し乾して薬にする。
効力は蓯蓉に百倍する。
恐らくこれにもいろいろの種類があるのであろう。
肉蓯蓉・列当(草蓯蓉)も、
すべてが遺精から生じたものというわけでもないのである。
気味〔甘、温〕よく陰気を補い、精血を益し、
大便の通じをよくする〔燥結しないものは用いてはいけない〕。
(寺島良安[著]島田勇雄・竹島淳夫・樋口元巳[訳注]『和漢三才図会 16』
東洋文庫、平凡社、1990年、pp.143-144)
「遺精」とは、性行為を伴わない不随意の射精のこと。
「男陽」とは、陰茎、男根のこと。
「淫婦」とは、多情で浮気な女のこと。
「怒長」とは、血管などがふくれること。
以上の熟語をおさえておくと、だいたいの意味がつかめることになりますが、
はて、そんなの、ほんとにあるのか?
と、疑わないわけにはまいりません。でも、
なさそうでありそうなのが、なんともおもしろい。
・一斉に息吐く夏の交差点 野衾