わたしの部屋からおおきな桜の木が見えます。ここに住むようになってから約三十年
になりますが、
ほぼまいにち見ているはずです。
ここは、もともと山だったのでしょうね。
いかにもそこを切り崩して宅地にしたというような地勢で、
わたしのところから見ると、桜の木は、
伊良湖岬を小ぶりにしたようなカーブの先の丘の上にあるのです。
朝のツボ踏み運動をしながらまいにち見ていて、
ふと思いました。
ちかくまで行ったことがないな。
わたしの部屋からだと、
直線にしておそらく100メートルぐらいではないかと思いますが、
下の道から急階段があり、途中でいちどガキッと曲がって、さらに上方へ。
その階段、
どうやら丘上にあるお宅の個人所有のものかとも想像され、
そんなこともあって、
これまで近づくことをしませんでした。
が、
階段の登り口にとくに注意書きはなさそうだし、
登って行って、ちゃんとことわればいいことかな。そんな気がしてきました。
リスくんたちのホームもその辺りにありそうだし。
それにしても大きな桜の木。
この木なんの木、桜の木、てか。
うすピンクの花が咲いているときはもちろんですが、
散ってからも、風の日は風の日なりに大きくしずかに揺れうごき、
風のない日は風のない日で、
緑のなかの点々とある葉陰がなにを思うのか、
思わないのか、
安らいでいるようにも見えます。
・撥ね返り膝下までも夏の雨 野衾