カラス愛の本 1

 

おもしろい本を読みました。松原始(まつばら はじめ)さんの『カラスの教科書』。
いまは文庫になっているようですが、わたしが読んだのは単行書で、
カラスについて、豊富な知見と調査、研究をとり交ぜながらの肩の凝らないエッセー集。
数年前、出社の折に、自宅から山を下りる階段のところで、
背後から帽子をかすめるようにして飛んでいったカラスに遭遇するなど、
浅からぬ縁を感じています。ちなみにわたしの干支は酉年。

 

カラスの中でもかなりスカベンジャーに特化した生活史を持っていそうなのが、
ワタリガラスだ。
ワタリガラスはユーラシアから北米に分布する世界最大のカラスだが、
実はこの分布はオオカミの潜在的な分布とほぼ一致している。
さらに、
北米ではオオカミの分布が縮小するにつれてワタリガラスの分布も縮小傾向にあったが、
その後、
コヨーテが増えてくると
ワタリガラスが戻ってきた場所があるという。
つまり、
ワタリガラスは捕食動物の食べ残しを片付けるというニッチに特化した鳥である
可能性がある。
(松原始『カラスの教科書』雷鳥社、2013年、pp.126-127)

 

なるほどねぇ。これもカラスが生きていくための知恵のひとつなんだろうな。
引用したのは、北米の例ですが、
著者ご自身が知床で観察したワタリガラスの例もとり上げられています。
この本にはカラスのイラストがふんだんに収められていますが、
それも著者である松原さんが描いたもの。
イラストを見ているだけで、
著者のこよなきカラス愛が感じられてたのしい。

 

・坂上る夏服の子に夕日かな  野衾