子どものころのエピソードを書いているうちに、いろいろ思いだされてきます。
どこに仕舞われていたのか、ちょっと不思議な気もします。
小学四年生か五年生の夏休みだったでしょうか、
居間で昼寝をしていたことがありました。
そのときは、家族みんな、いた。
目が覚めたとき、しばらく、自分がいまどこにいるのか、
はっきりせず、もくっと半身を起こし、
あたりを見回しているうちに、なんだ、自分の家かと思い安心しました。
が、わたし以外だれもいません。
父も母も、祖父も祖母も、いつもいっしょの弟も。
昼寝を始めたときは、まわりにみんないたのに、どこへ消えたのだろう。
不安がもたげてきました。
子どもは夏休みでも、おとなは仕事があるから、
田んぼに出かけたのか。
でも、弟までいないのはどうしてだろう。
わたしより早く目覚め、おとなといっしょに出かけたのか。
立ち上がり、
道をはさんだ向かいの家のほうを見やる。
だれもいない。
いよいよ不安がつのってくる。
落ちつけ落ちつけ。
午後の仕事に出かけただけ。弟はそれに付いて行っただけ。
アタマと気持ちがちぐはぐのまま、
こころもからだも、うろうろしていると、
小屋のほうから祖父の姿が見えた。
ほ。
大きな事件や事故というわけでなく、
ちょっとした、こんなことも
記憶の棚のどこかに仕舞われているようです。
・静止するブランコと揺れる鉄棒 野衾