さまざまのこと 11
子どものころのエピソードを書いているうちに、いろいろ思いだされてきます。
どこに仕舞われていたのか、ちょっと不思議な気もします。
小学四年生か五年生の夏休みだったでしょうか、
居間で昼寝をしていたことがありました。
そのときは、家族みんな、いた。
目が覚めたとき、しばらく、自分がいまどこにいるのか、
はっきりせず、もくっと半身を起こし、
あたりを見回しているうちに、なんだ、自分の家かと思い安心しました。
が、わたし以外だれもいません。
父も母も、祖父も祖母も、いつもいっしょの弟も。
昼寝を始めたときは、まわりにみんないたのに、どこへ消えたのだろう。
不安がもたげてきました。
子どもは夏休みでも、おとなは仕事があるから、
田んぼに出かけたのか。
でも、弟までいないのはどうしてだろう。
わたしより早く目覚め、おとなといっしょに出かけたのか。
立ち上がり、
道をはさんだ向かいの家のほうを見やる。
だれもいない。
いよいよ不安がつのってくる。
落ちつけ落ちつけ。
午後の仕事に出かけただけ。弟はそれに付いて行っただけ。
アタマと気持ちがちぐはぐのまま、
こころもからだも、うろうろしていると、
小屋のほうから祖父の姿が見えた。
ほ。
大きな事件や事故というわけでなく、
ちょっとした、こんなことも
記憶の棚のどこかに仕舞われているようです。
・静止するブランコと揺れる鉄棒 野衾