母の実家は羽白目(はじろめ)にありましたが、
そのちかくに上虻川(かみあぶかわ)というところがあって、
そこに父の姉が嫁いだ家がありました。
父の兄弟姉妹は八人で、父は長男でしたが、八人のいちばん上が貞子。
母の実家から上虻川の貞子おばさんの家までは、
子どもの足で10~12分ほどでしたでしょうか。
そこにも、
すくなくとも一度は泊ったことがあります。
大きな家で、トイレが家の外にありました。
わたしが子どものころは、父の家も、トイレは外でしたから、
そのこと自体は、
とくに違和感はありませんでした。
が、
慣れていないせいとは思いますけれど、
はじめて泊まるところのトイレが家の外、というのは、うす暗いし、こわかった。
あたりに目を凝らすようにして用を足した。
昼間は何ということはありません。
問題は、夜。
灯りがあるとはいえ、
夕刻、あるいは夜中、トイレに行くのは、よほどの勇気がいりました。
ほとけさまのある部屋にふとんを敷いてもらい、
そこに寝たのだったと記憶しています。
天井の高いその部屋のふんいきと外のトイレは、
ほんのときたまですが、いまも夢に見ることがあります。
おばさんの家に泊まることは一度、
多くて二度、
三度はなかったと思いますが、
母の実家と貞子おばさんの家までは歩いて10分ほどですから、
お日さまのでている時間帯なら、
母の実家に行けば、かならず訪ねていきました。
歳をとってからのおばさんは、わたしの祖母によく似ていました。
・まどろむ古里この世の雲雀 野衾