わたしの「はじめてのおつかい」がいつだったのか分かりませんけれど、
子どものころ、家の者の指示で、
つかいに出されることが間々ありました。
たとえば、
米を持参し下の町内の川べりにある家を訪ね、
麹(こうじ)と交換してくる、などの用事を言いつかるとか。
米でなくおカネを持っていったのか、
ちょっとあいまい。
いちばん古い「おつかい」かどうかはともかく、
そうとう古く、したがって、
ごく小さい子どものころの記憶としていまもおぼえていることがあり、
ではありますが、
なんの用事を頼まれたのかはおぼえていません。
ふるさとの、
わたしの地域の墓地はふたつあり、
祖父母と先日他界した母のお骨は新しい墓地に納めてあります。
それとは別に、もう一か所、
すこしはなれたところの小高い丘の上に
古くからある墓地があり、
子どものころ、
祖父母もまだ元気にしていましたから、
お盆になると、ゆかりの人の墓へお参りに行ったものです。
その丘の下に、大きな古い家があり、
そこへ、なにかの用事を言いつかり、訪ねていったことがありました。
親戚だった可能性もあります。分かりません。
ともかく、
とても大きな家だったこと、
重い扉を開けると土間が広かったこと、
そこが暗かったこと、
歳のいった白髪の女性が対応してくれたこと、
そんなことをぼんやりおぼえていて、
その後なんどかその光景を夢に見るようになりました。
とくに怖い夢、というわけではありません。
ただ、
その夢のあとにつづく夢が、怖いものに移っていったことはあります。
ヘビが出てきたり、ヘビが多くかんけいしていたり。
あの家がいまあるのかないのか、
いや、そもそも、そこに家などなかったのか、
わたしの記憶が、どこまでが事実で、
どこからが夢のはじまりなのか、
いまとなっては区別することができません。
・白服の店員駅横のパン屋 野衾