小学校のときに、なべっこ遠足というのがありました。
なべっこ遠足の「なべ」は鍋。鍋っこ遠足というわけです。
食材を持って生徒と先生たちがいっしょに出掛け、川べりで煮炊きをします。
わたしの班は「だまっこ鍋」。
つぶしたご飯をまるめただまっこ、鶏肉、ゴボウ、セリ、マイタケ、ネギ、醤油など。
Aさんはだまっこ。Bさんは鶏肉。Cさんはゴボウとセリ、
というふうに。
わたしは事前に母か祖母に言って、
わたしも手伝い、だまっこを用意してもらいました。
いったん学校に集まり、
それから目的地に向かいましたが、
とちゅう、じぶんの家を横に見て歩くことになりますから、
「ほら、そこがオラの家だよ」と、ちょっと恥ずかしいような、誇らしいような。
井内を越え、長いゆるい上り坂を越えて歩き、
やがて大台に至ります。
さらに歩くと道がだんだん細くなり、山々が迫ってきます。
くねくね曲がる山道を、
あたりの景色に触れながらクラスの友だちと歩くのはなんとも楽しく。
水がちょろちょろ流れ落ちる沢を越えると、
大きな一本杉があり、
そこから川べりに下りる細い道がありました。
一列になり、そろり静かに下りていきます。
川べりにはゴツゴツした大きな石が顔をそろえ、
場所によって小石や砂の平地もあります。
煮炊きをするには、
大きな石をうまくつかって、にわかづくりの竈を用意します。
水はどうしたんだったかな。
持って行った記憶がないから、
たぶん川の流水をつかったのだと思います。
班ごとに用意してきた具材を用い、自然の景色にかこまれ、自然の音を背景に、
みんなして火を焚き、料理を作り、鍋をつつきました。
野外で火を燃やすと、
どうしてあんなにこうふんするんだろう。
つくった料理は、先生たちにもおすそ分け。
その後、中学、高校、大学へとすすみ、
社会人になっても、
ふるさとへ帰り、山菜採りなどのためにその場所を通るとき、
かならず思いだすことになります。鍋っこ遠足。
・切通し弁天様の五月かな 野衾