さまざまのこと 20
道の印象はいろいろ。薄暮のなかへ引き込まれるようにつづく道があるかと思えば、
カンカン照りの太陽の下のまっすぐの道もあります。
かよいなれた小学校のあった葹田(なもみだ)から左へ折れる道が
記憶のなかで月明りに照らされているとすれば、
右へ折れる道は館岡(たておか)へと至る明るい道。印象のはなしです。
小学校二年生、三年生だったかな、
年については、正確にはおぼえていません。
ただ、ことがらとしては、はっきりとおぼえています。
社会科の授業の一環として、学校から家までの地図を描いてみよう、ということで、
わたしの班のだれかが、それなら館岡の山に登れば、
学校とその周辺が一望できるから、そこへ行ってみよう、
と言いました。
野外活動がゆるされる授業でした。
学校を出て館岡の目的地までは二十分ほどかかったでしょうか。
山というか丘の上からは、
学校周辺がパノラマのように見わたせます。
学校を起点とし、
わたしの家のある方角へたどると校門を出てすぐにお店があり、
そのとなりのとなりがクラスのHさんの家、
そこで家並みがとぎれ、道は寺沢へと向かいます。
大きな屋根のある家の前を井川が流れ、川べりには、丹波栗の大木。
その木がはっきり見えたわけではありませんが、
あることはある。
寺沢にはまたクラスの友だちYくんの家もあります。
ふだんかよっている道を、
全体ではないけれど、一望できたことに感動を覚えました。
そこまでがくっきりしている記憶で、
そこで見た光景をその場で地図に落とし込んだのか、
ササっとメモ程度に描いて、学校へ戻ってから清書したのか、
そこのところはもはや
霧がかかって定かではありません。
・夏近し土器と鏃の森へ行く 野衾