南こうせつさんの『いつも歌があった』
は、
インタビュアーの前田祥丈(まえだ よしたけ)さん相手に
こうせつさんが語ったものを一冊にまとめたもので、
とてもおもしろく読みました。
こうせつさんが、これまで、そのときどきに、
何を感じどう生きてきたのか、
そしていまはどう思っているのかを知ることができ、
ますますこうせつさんを好きになりました。
語られているエピソードも、
へ~、そんなことがあったんですか、と知らないことが多く、
なかでも、下に引用するエピソードは、
いいなあとしみじみ思います。
第一期かぐや姫を結成した時には、連絡先が僕の下宿になっていました。
しかしプロとして活動する以上、
さすがにプロダクションに所属しないとマズイということで、
レコード会社の元宣伝担当だった人が作った芸能事務所に所属しました。
これが演歌の事務所で、
まず「出てください」と言われたのが『全日本歌謡選手権』という
10週勝ち抜きを目指すオーディション番組。
「有名になるためにはテレビに出なさい」
と、
知らないうちにスケジュールを決められていて、
「いやだ」と言うと
「それなら宣伝費もかけない」と脅しが入ったり。
キャンセルするのも悪いと思って出たら、
喜んでいいのか悲しんでいいのか勝ち進んでしまいました。
でも、
どう考えてもこれは演歌の人が出る番組で、
審査員も演歌畑の人ばかり。
それで4週目の後に辞退しましたが、
同じ週が五木ひろしさんの10週目でした。
その日の番組が始まる前に、
五木さんが「僕、デビュー決まったんだ」って言ってきた。
「ああ、良かったねえ」
「聴いてくれる?」
「もちろん!」
ふたりで洗面所に行って、洗い場に腰かけた五木さんが
「よこはま・たそがれ」を歌って、
僕は目の前で聴いていた。
「どう思う?」
「五木さん、絶対に売れる」
「本当?」って。
五木さんは、いまだにその時のことを覚えています。
(南こうせつ[著]『いつも歌があった』yamaha music media、
2019年、pp.65-66)
上の引用文にでてくる『全日本歌謡選手権』を、わたしはよく見ていました。
中学生でした。
五木ひろしさんが、勝ち抜いていく様子も、
記憶に残っています。
あの番組に、かぐや姫がでていたというのは、知りませんでした。
見ていたのに記憶から落ちてしまった、
その可能性もあります。
・散りて落つ葉かと見遣れば寒雀 野衾