『トポス論』を読むと、アリストテレスさんの本領発揮とでもいうのか、
理屈っぽいことこの上ないわけですけど、
たまに、ほんとうにたまにですが、
眉間にしわを寄せなくても読める箇所がでてきて、
ホッと安心する具合。
また、それぞれのものには、それがより大きな力をもつ時機があり、
その時機においてより望ましくもある。
たとえば、
苦痛のないあり方は、
若年よりもむしろ老年におけるほうが望ましい。
なぜなら、
老年におけるほうがより大きな効力をもつのだから。
その意味で、思慮もまた老年におけるほうがより望ましい。
なぜなら、
誰も若者たちが思慮をもっていることを要求しないために、
若者たちを指導者とすることを選択しないのだから。
しかし、勇気については事情は逆である。
なぜなら、
若いときのほうが、勇気にもとづいた活動は、より必要なのだから。
また節制も同様である。
なぜなら、
若者たちのほうが年配者たちよりも欲望によって
より多く困惑させられるからである。
(アリストテレス[著]『アリストテレス全集3』岩波書店、2014年、
p.112)
一読、たとえばキケロさんとかセネカさん?
と勘違いするような言いぶりで。
こういうことは、
いかに理屈好きのアリストテレスさんとはいえ、
理屈では測れないところかと。
だからこそ、
かえってアリストテレスさんの人生観を垣間見た気になります。
・冬晴れは凛と鳴りたる心かな 野衾