雨の匂い

 

一日の仕事を終え外へ出ると、ふっと、雨の匂い。包まれるようです。
しずかに大きく深呼吸。
もう一度。
伊勢山皇大神宮の裏参道は、雨にぬれ、黒く光っています。
社内で、ちょっと楽しいことがありました。
大いにウケ、しばし仕事を離れ、
いる人みなで笑いました。
笑いの火照りがまだ体にのこっていたらしく、
それでいっそう、
火に雨が注がれ、火が消え、煙が立つように
匂いが立ち、
鼻腔が刺激されたのかもしれません。
お香の香り、匂い袋の香りも好きで、自宅でも会社でも愛用していますが、
自然の匂い立つ香りにはかないません。
形のないものが、だんだんと形を変え、はっきりしてくる
ことが「立つ」の語源
のようですから、
雨の匂いをとおして、いまのこの季節が、
わたしにも立って、
立ち現われれてくるようでした。

 

・青簾じつと視てゐる祖父母かな  野衾