ヒルティさん

 

ヒルティの『幸福論』を読んでいると、
厳格なおじいちゃんのまえで正座させられ
道徳の話を聴かされているような
そんな気分になるわけですが、
たまに頑固なおじいちゃんの一人合点なもの言いに出くわし、
思わずプッとふきだすようなところもあります。

 

しかしこの利己主義が意識的になりはじめるや、婦人は急速に悪化し、
そしてそれが美しい婦人である場合には、
この世における悪の最も危険な道具となる。
こうした魔力がその力をひろげようとしたら、そのときこそ断固としてこれに抵抗し、
その威力を揮わせないようにしなければならない。
だから、
なまめかしい、あるいは過度におめかしをした婦人には決して特別の注目を贈ってはならない。
そうするのが、彼女らのためにも、われわれのためにも、一番いいのである。
(カール・ヒルティ著/斎藤栄治訳『幸福論Ⅱ』白水社、1958年、pp.152-3)

 

にんげんに対して厳しい見方をするヒルティさんですが、
たとえば引用したこの箇所のものの言い方は、
一般論のなかに
きわめて個人的な感懐が潜んでいるようにも感じられ、
おもしろい。

 

・降り止まず千古の雪や空も海(み)も  野衾