堀口大學の詩

 

・ひむがしに旭日梅雨をはらひけり

魂よ、
お前は扇なのだから、
そして夏はもう過ぎたのだから、
片隅のお前の席へ戻つておいで、
邪魔になつてはいけないのだから。

魂よ、
お前は扇なのだから、
そして夏はもう過ぎたのだから、
もう一度自分に用があらうなぞと
思つてはいけないのだから、
たとへ夏はまた戻つて来ても
来年には
来年の流行(はやり)があるのだから。
……………

堀口大學の詩集『人間の歌』にある
作品「魂よ」の前半部。
辻征夫『私の現代詩入門 むずかしくない詩の話』(思潮社)
で知りました。
ぐっとくるね~。
そうそう。こないだここで紹介した山崎洋子さんも
近著で書いていました。
これまで何度かそうしようと思い、
ひとから勧められてもできなかったのに、
今回、過去と向き合い
それを文章に綴ることができた
そのきっかけは、
横浜市から届いた通達
「あなたは前期高齢者です」であったと。
笑うに笑えない。
わたしはまだ前期ではありませんが、
初期ぐらいではあります。
先日も大雨の中、
傘をすぼめ急いでタクシーに乗ろうとして、
前額をドアの縁にしこたまぶつけた。
まだちょっと傷が残っています。
寅さんのセリフにも
「惜しまれて、引きとめられるうちが花ってことよ」
っていうのがあったなぁ。
魂よ、お前は扇なのだから、かぁ。
ほんと。
収めるところに収めておかなければ。

・梅雨の道ちよびりちよんびりちよびりかな  野衾