夜のためいき

 

・叩くほど粘りたつぷりミズタタキ

このごろテレビを点けると歌番組が多い。
昔の歌手の歌を今の歌手が歌う。
へたくそーっ!!
て思う。
味も素っ気もない。
三橋美智也の「哀愁列車」を氷川きよしが。
村田英雄の「無法松の一生」を神野美伽が。
お呼びじゃない。
「哀愁列車」も「無法松~」も技巧で歌える歌でない。
元歌をCDで聴く。溜飲が下がる。
すごいものだ。
洟垂らしのガキの頃は分からなかった。
分からなかったといえば、
松尾和子。
「誰よりも君を愛す」「東京ナイトクラブ」「再会」などで有名。
それぐらいは知っていたけれど、
ジャズの曲を歌っていたとはつゆ知らず。
きっかけはテレビ。
若き日の松尾が「再会」を歌っていた。
歌詞の冒頭は
「逢えなくなって 初めて知った 海より深い 恋ごころ」
「な」「て」「じ」「め」「た」「み」「り」の音が入っている。
このうち、
「な」「て」「じ」「た」「り」は、
音を出すのに舌先が上顎をこする。
「め」「み」は上唇と下唇が接触する。
その擦過音と接触音が独特で、
なんか日本人離れしているなぁとテレビを見ながら思った。
さっそくアマゾンで検索し注文。
『夜のためいき』というCDを聴き、ぶっ飛んだ。
日本人でこれほどジャズの曲を歌いこなす女性がいたとは!
松尾和子は1935年の生まれ。
『夜のためいき』は1966年に吹き込まれたものだから、
松尾31歳のときのもの。
ジャズが好きで、若い頃から進駐軍のキャンプや
ナイトクラブでジャズを歌っていたらしい。
いやはや、たまげた。

・梅雨の夜和子のこゑに痺れけり  野衾