哀歌

 

・梅雨を待ち早く明けよと梅雨に飽く

充実の日は悲し
疲弊を燃焼と思へども
其は錯覚との追懐は 早も来…
久方ぶりの友との一献
この世の二番の好物
苦渋の体験より
抽出された
いのちの証し
事の葉は
慰めとはならじ
充たされた日は哀し
充たされぬ日は寂し
充たされても
充たされずとも
日は過ぎ
日は過ぎ
昏き底の焦慮の名残り
幾千の選択
幾千の岐路
遥かより 眺むれば
譬へば幾何の蜘蛛の巣の
吐いた糸に
掠め取られ
ああすればよかったの後悔は
闇に惑ひ
大儀の空を
抱く
夢うつつに
時は過ぎ
古臭き
恋は哀しき玩具
にて
背中の樋の

また痒み
消えず在り
陶酔は彼方へと去り

・六月の空を智恵子も眺めたか  野衾