誰にでも

 

・ラフロイグ故郷までのディスタンス

山崎洋子さんの近著
『誰にでも、言えなかったことがある ――脛に傷持つ生い立ち記』
(タイトル、長!)読了!
巻を措く能はずとはこのこと。
親に捨てられ、頼りだった祖母は入水し自ら命を絶ち、
育ての母親と腹違いの弟には虐待を受け、
教師からは差別的な目で見られ、
と、
書きようによっては
陰陰滅滅おも~くもなるところ、
お人柄と文体によるとでもいうのか、
決して重く感じさせず、
露悪にもまた偽善にも堕さず、
颯爽としており、
読んでいて
風が通り過ぎるようにさえ感じるから不思議。
読みながら、
もらい泣きしたり、
もらい怒りしたりと忙しくもあり。
たとえば電車内。
シートに座っている著者の前に妊婦が立った。
著者はサッと席を譲る。
電車は走り二駅三駅。
妊婦の隣りの席が空く、
と思ったら、
速攻、妊婦の夫がそこへ座った。
あ~らら。
著者怒る。
なんでわたしに席を勧めない?
妊婦も妊婦、夫の行動をなんとも思わないのか。
そのことを後に知人に話したら、
今の社会が分かっていないよと笑われたというが、
わたしは著者に百パーセント同感です。
想像するだに腹立たしい!
怒りで煮えくり返る。
どきゃあがれこの馬鹿夫婦! と怒鳴りつけたい。
ということで、
お薦めですこの本。

・ラフロイグ舐めて不得の苦を忘る  野衾