練功三年

 

 息白し無駄のこころを省きけり

毎日の気功を始めて三年が過ぎ、
今月から四年目に入りました。
ときどき、ん!? と、
体に微かな異変を感じることもありますが、
あまり気にせず、適当にやり過ごし、
むしろ、日々の気功に精を出すようにしています。
本家の中国では、三年どころか三十年
続けている人がごろごろいるという話を
聞いたことがあります。
四十年となると、三十年選手(!?)とは
またちがった動きになるのだとか。
今から四十年となると、九十二歳。
それまで生きるかどうか、分かりませんが、
しなやかな動きを身につけて、
ポックリ逝きたいと思います。
帯津三敬病院の名誉院長で、
著書も多い帯津良一さんの
帯津式「達者でポックリ」の
二項目目が「気功を身につける」です。
ちなみに一項目目は「できるだけ歩く」。
背骨ゆらゆら健康法
気功瞑想でホッとする』を参考に、
みんなで気功をやりましょう。
って、最後は宣伝でした。

 降る雪ややおら獣になる時間

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自嘲

 

 文楽のこゑのここまで蜜柑かな

ときどき自分のおこないを客観的に眺めて、
笑ってしまうことがあります。
先だって笑ってしまったのは、トイレに入ったときでした。
用を足そうと、ズボンのチャックを下ろして、
中のモノをつまみ出そうとするのですが、
ズボンがパンパンなために、
また、寒さでモノが縮んでいるために、
どこに紛れ込んだのかとんと見当がつかず、
おや? あれ? ってんで、
つい、へっぴり腰+ガニ股になります。
なぜへっぴり腰+ガニ股になるかといえば、
そうすることで、前に空白ができ、
モノが取り出しやすくなるからです。
あははは… 酔っ払い爺みたい、と、
トイレのなかで一人笑ってしまいました。
社に戻り、男子諸君に尋ねてみたところ、
多かれ少なかれ、同じような格好で
モノを取り出しているとのことでした。
ところで、
わたしは今、ズボンを「ズボン」と、
チャックを「チャック」と書きましたが、
「ズボン」は「パンツ」、
「チャック」は「ファスナー」と書くべきだったかもしれません。
こういう単語の由来について、分かりやすく、
面白く書かれた本がまもなく出ます。
タイトルは『英単語のいのち』、
あのベストセラー(!?)『英語になった日本語』の
続編とも言うべきもので、三月刊行予定です。
著者は早川勇氏。
わたしの師匠でありスーパーエディターであった故・安原顯氏が、
エッセイで「パンツ」を買った話を頻繁に書いていたら、
ジャズ喫茶オーナーで
弊社から『たのしいジャズ入門』を出している寺島靖国氏は、
「どうしてそんなにパンツをしこたま買うのか」と
突っ込みを入れたそうです。
寺島さんの気持ちがよく分かります。
わたしも、「ズボン」を「パンツ」と言うのは、
抵抗があります。

 二寸子を取り出すまでの寒さかな

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私の本

 

 散髪の頭に巻きしマフラかな

千葉県松戸市在住の松菱多津男さん(80)が編纂した
『ガリヴァー旅行記蔵書票集』が、
読売新聞千葉版に取り上げられました。
蔵書票は、一般的にはあまりなじみがありませんが、
熱烈なファンが多くあり、
「紙の宝石」と呼ばれているものです。
記事の詳しい内容は、こちらをご覧ください。
本がまだ貴重だった時代に、
「私の本」であることの証に、
本の所有者が版画作家に十枚、二十枚と、
小さな版画=蔵書票をたのみ、
それを、いのちの次(奥さんや、親や子どもや恋人の次)
に大事な本の見返しや扉に貼り付けていました。
新聞に紹介されたおかげで、
昨日、電話での問い合わせが十数件ありました。
蔵書票に関心があるということは、
とりもなおさず、電子ブックでない、
紙の本に関心があるということです。
機械に蔵書票を貼るのは、ちょっと変ですから。
記事には、
松菱さんの二十年来の夢を実現させ、
とありますが、元をただせば、
原爆を落とされた広島を訪ねていった十七歳のときに、
その種は播かれていたといっても過言ではありません。
人生の深い味わいを、
『ガリヴァー旅行記蔵書票集』は湛えていますが、
春風社にとっても、
今後の行く道を豊かに示してくれる
ありがたい出版物になりました。

 おむすびの坊主頭がマスクかな

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創業一二〇周年

さ湯すすりジャズと落語の炬燵かな

きのう二月一日は、神奈川新聞社創業の日。
はじまりは「横浜貿易新聞」と称していました。
この好き日にあたり、不肖わたくしが、
紙面の半分ぐらいを占め、でかでかと、
写真入りで紹介されました。
いろいろな職業人を月一で紹介する新コーナーで、
その最初というのですから、実に名誉なことです。
取り上げてくださった神奈川新聞社、
記事を書いてくださった記者の宮島さんに感謝します。
春風社は、ただいま十一年目。
まだ十分の一にも達していませんが、
継続することの意味を噛みしめながら、
歩んでいきたいと思います。

句をひねり游ぶ大人の朝の雪

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景気は?!

 

 大寒や故郷看板大自慢

月に一度行く床屋さんに行ってきました。
「景気はどうですか?」
「まあまあ、ってとこですかね」
「そちらは?」
「まあまあ、ってとこですかね」
この四句が、だいたい挨拶がわりです。
聞けば、きのうは、朝七時から始めたのだとか。
予約制で、客の都合に合わせて店を開けます。
いちばん早いときなど、
朝四時半に開けたこともあるそうです。
パンチパーマをかけ、髪を染め、すべて終了したら、
夜がしらしらと明け始め、
やがて二人目の客がやってきた。
…てなことを聞いているうちに、
わたしの坊主頭は終ります。
「ありがとうございました。客が続くといいですね」
「いやぁ。たぶん今日はこれで終りでしょう」
御代を払い、京急井土ヶ谷駅近くにある菓子舗
「濱うさぎ」までぶらぶら歩き、
どら焼き二つと栗甘納豆を買って店を出、
来た道をまたぶらぶらと。
歩きながら、床屋の中をひょいと覗くと、
二脚ある椅子に客はなく、
ご主人の姿も見えませんでした。

 毛布巻き落語のこゑの刺さりけり

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