人間理解

 

 本二冊読んで顔上ぐ余寒かな

犬が飛びついたって、馬が鼻をこすってきたって
「嫌よ、嫌よ」なんて気取らないでしょう。
正直に「可愛いワ」という。
ところが人間同士になるとそれを素直に表現しない。
ひどいのになると、自分のやりたかったことでも、
他の人がサッサとやっているのを見ると、
もう自分のやり度いという考えをサッと捨てて
「いやらしい」とか、
「あんなことやってどうするつもりなのかしら」とか
「まア厚かましい」とか、
そういうことやっているのが間違っている
というような表現をすることは珍しいことではない。
その逆に、そういうことをやっている相手が
自分の好きな人だと、
自分のやりたくないと思っていたことでも
ツイ良く見てしまったり、
又同じことを自分迄がやってしまうことさえあるのです。

以上は、整体の提唱者・野口晴哉の
『人間の探求』のなかの一節です。
野口さんはまた、この本の「序」に、
「世の中はいろいろ変ったが、
ここで説いていることは、これからも変らぬことと思う。」
と記しています。昭和四十九年二月とありますから、
三十六年前のことです。

 長靴を取り出し名残の雪となり

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