自嘲

 

 文楽のこゑのここまで蜜柑かな

ときどき自分のおこないを客観的に眺めて、
笑ってしまうことがあります。
先だって笑ってしまったのは、トイレに入ったときでした。
用を足そうと、ズボンのチャックを下ろして、
中のモノをつまみ出そうとするのですが、
ズボンがパンパンなために、
また、寒さでモノが縮んでいるために、
どこに紛れ込んだのかとんと見当がつかず、
おや? あれ? ってんで、
つい、へっぴり腰+ガニ股になります。
なぜへっぴり腰+ガニ股になるかといえば、
そうすることで、前に空白ができ、
モノが取り出しやすくなるからです。
あははは… 酔っ払い爺みたい、と、
トイレのなかで一人笑ってしまいました。
社に戻り、男子諸君に尋ねてみたところ、
多かれ少なかれ、同じような格好で
モノを取り出しているとのことでした。
ところで、
わたしは今、ズボンを「ズボン」と、
チャックを「チャック」と書きましたが、
「ズボン」は「パンツ」、
「チャック」は「ファスナー」と書くべきだったかもしれません。
こういう単語の由来について、分かりやすく、
面白く書かれた本がまもなく出ます。
タイトルは『英単語のいのち』、
あのベストセラー(!?)『英語になった日本語』の
続編とも言うべきもので、三月刊行予定です。
著者は早川勇氏。
わたしの師匠でありスーパーエディターであった故・安原顯氏が、
エッセイで「パンツ」を買った話を頻繁に書いていたら、
ジャズ喫茶オーナーで
弊社から『たのしいジャズ入門』を出している寺島靖国氏は、
「どうしてそんなにパンツをしこたま買うのか」と
突っ込みを入れたそうです。
寺島さんの気持ちがよく分かります。
わたしも、「ズボン」を「パンツ」と言うのは、
抵抗があります。

 二寸子を取り出すまでの寒さかな

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