地元貢献

 夏本番胸焼け覚悟のポテチかな
 保土ヶ谷に「ひかり歯科」がありますが、歯の具合が良くないとき、わたしはそこで診てもらいます。あご髭を生やしたダンディでイケメンの先生です。
 ホームページを見たら、ほんの申し訳程度の紹介しかなく、いまどき珍しいと思っていたのですが、あるとき先生の話を聞く機会があり、なるほどと思わされました。
 ホームページを充実させると、それを見た患者が、あちこちからやって来る。それも、いろいろ他で診てもらって満足できない患者が。わたしはここで生まれて育ったので、開業したときから地元の患者さんを診たいと思ってきました。なので、ホームページは作っていません。ああ、あれですか。業者がただで紹介してくれるというので、断るのもどうかなと思って載せてもらったものです。…
 休日、国道1号線裏の旧街道を歩いていたとき、見たことある顔だなと思ったら、ひかり歯科の先生でした。甚平姿がよく似合っています。これから祭にでも出かける様子で、仲間数名と停めてあったクルマに乗り込みました。あご鬚は、こういう日のためにも剃らずにおいているのだなと合点がいきました。

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お料理も

 網戸替え日がな一日他に無し
「今度あそびに来たら、りなちゃん、なに食べたい?」
「う〜ん。オムライスかな? ママ、得意なんだよ。美味しいんだから」
「そか。でも、りなちゃんのママより美味しいオムライスつくる自信ないよ」
「ふ〜ん」
「ママがつくらないようなものをつくるよ」
「……」
「ネ」
「ねぇねぇ、みうらさん(語尾がちょっと上がる)。でもね、お料理もジャズとおなじでしょ。演奏するひとがちがうと同じ曲でも別になるように、お料理も、つくるひとがちがうと別でしょ」
「そか」
「オムライスつくる?」
「う〜ん…。ハンバーグにする。どう?」
「うん。いいよ!」

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古写真

 眼の端をゴキブリかとぞブラブラ爺
 自宅の本をかなり処分した話は、ここに何度か書きましたが、処分した本の中に写真が1枚挟まっていたと、古書店のご主人から連絡があり、最後の本を持っていってもらうときに、その写真を受け取りました。
 相当若いときの写真で、髪もふさふさ、体も締まっています。香港の映画スターのようだと、古書店のご主人に冷やかされました。にやけた口元から洩れる白い歯並みがたしかに、歯はいのちと主張しているようにも見えます。
 10代から20代頃でしょうか。だれが撮ってくれたのか。場所は、秋田の出戸浜の海岸のようにも見えますが、わかりません。
 三つの頃の写真ならともかく、おそらく高校生か大学に入った頃かと思われる写真なのに、トンと思い出せないのです。
 ヘルマン・ヘッセ『シッダールタ』のなかに挟んであったというのが、写真よりも恥ずかしい。

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ムリ三中

 女子高生裾ひるがえす暑さかな
 昨日、網戸の張り替えをしました。
 一昨年、テレビでお笑いの森三中が、「自分でできる網戸張り替え! イェ〜イ!!」の番組をやっていて、それを見、へ〜、森三中ができるんなら、おいらだってできるべーと、さっそく近くのスーパーに行き、網を買ってきて、さあ、張り替えるぞー! と勢い込んだのですが、網を張り替えるにはゴムが要るのでした。
 汗をかきかき山を上った(わたしの家は山の上にあります)のに、また山を下り、スーパーへ行き、網を止めるためのゴムを見たら、な、なんと、太さがいろいろあって、調べてから買わないといけないのです。わたしはほとんど腐りかけていました。また家に戻り、ゴムの太さを計り、また山を下り、山を上りしてようやく張り替えたのが二年前。
 今回は初めてではないし、前回の経験と学習が身に付いているかと思って、気を抜いていた(わけでもないのですが)のか、山を下り山を上りして、さあ始めるぞと思ったら、またゴムがない。買うのをまた忘れてしまいました。気持ちが腐って、もうやめた! となりそうなのを堪え、また山を下りました。
 張り替えが終わったのが夕方六時半。網がたわまぬようにしながらゴムをグッグッと押さえ込む作業はなかなかに肉体労働で、ほとほと疲れました。森山中があんな涼しい顔でできるわけがない! ムリ三中と呼びたくなるゆえんです。
 クソ暑い中、何度も山を下り上りして、ほとんど死んだ魚のような目をしていたわたし(自分ではわかりませんが、おそらくそうだったでしょう)でしたが、最後にスーパーを出た時、向こうから来たミニスカート姿の女子高生三人組の一人のスカートが風に煽られ、はらりと翻り、中の緑のチェック柄が目に入り、死んでいた目は生き返りました。あの一件がなければ、網戸張り替えは頓挫し、来週まで持ち越しになっていたかもしれません。

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励み

 カブトムシよくぞ我が家に来てくれた
 仕事はありがたいものですが、楽しいことばかりではありません。苦しいことも辛いこともあります。それよりも多いのは、可もなく不可もなく、普通に過ぎていくことでしょうか。それをなかなか、ありがたいとは思えません。溜め息が出たりして…。
 日常生活というのは、そうそう刺激的なことばかりではありません。若い時は、いま思えば、恥ずかしくなるような刺激もありましたが、このごろは、せりのゴマ和えなんかが、ほどよい刺激です。
 十五、六から三十五くらいまでは、たしかに刺激的でした。が、さかのぼって、小学校の頃はどうだったかと思い返せば、楽しかったけど、そんなに刺激的でもなかったように思います。やはり、こころを励ますものが必要でした。
 カブトムシやクワガタムシは、その最たるものでした。
 大きな赤銅色の羽を持つこのクワガタが自分のものだと思えることが、かなりのつまらなさに堪えられるような気がしたものです。

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イボ

 重き足数へし月や夏来たる
「あのー、左足の薬指に変な赤いモノができたんですけど、数年前からあるにはあったんですが、このごろ、と言っても突然というわけでもないんですが、少し大きくなった気がしまして、それでちょっと診ていただいたほうがいいのかなぁ、なんて思いましてですね…。えーと、これなんですけどね…」
「ああ、これ。イボですね」
「は。いぼ!? あのー、ただのイボですか」
「ええ。ただかどうかはわかりませんが、イボですね。液体窒素を塗っておきましょう。ちょっとピリッとしますが、水ぶくれになって、それから黒くなって、1週間もすればポロッととれますよ」
「はあ。ポロッとですか…」
「ポロッと。特に塗り薬も飲み薬も出しません。まあ、またなんかあったら来てください。お大事に」
「あ、どうも。ありがとうございました」
「はい。次のかたー」
 というわけで、人騒がせなイボ君でした。ま、わたしだけが騒いだわけですが…。

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傑作ポテチ!

 幼虫を突ついて片端のカブトかな
 新潟が生んだあの伝説的名菓「ふんわり名人」の時もそうでしたが、先ごろ近くのコンビニに入ったところ、何やら遠くでわたしを呼ぶ声がして、うろうろしていましたら、あるところでピタリと足が止まりました。
 目の前にそれは静かに佇んでいました。北海道リッチバター。むむ…。
 わたしは普段そんなにポテトチップスを食べません。しかし、この北海道リッチバターのたたずまいというか、袋からただよってくる芳醇なオーラというか、手に取らずにはおられませんでした。
 サイズがあるのかもしれませんが、そのコンビニで買ったのは105円と、それほど高くありません。
 店を出て、家に辿り着くまでの時間ももどかしく、歩きながら袋を破り、いけないものを覗き見るようにして袋から1枚取り出し、口中へ。
 な、な、な、な、な、なんだ、こ、この味は!!!
 今までのポテトチップスのイメージを根底からくつがえすような芳醇な味。もうやめられません。やめられない止まらないというのはこのことです。
 卒業証書を入れるような筒に入った高めのポテトチップスもありますが、あんなのは、卒業証書同様、大したことがないのに、立派な筒でもって権威づけしているに過ぎません。ところが、北海道リッチバターは違います。105円ですよ。リーズナブル・プライスじゃないですか。いよっ! 庶民の味方! いいぞ、ヤマヨシ! と、声を掛けたくなります。
 ちなみに下の写真は、わたしがプレゼントした北海道リッチバターを顔全体、からだ全体で味わって食している最中の、りなちゃんのお姉さんのひかりちゃん。

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