いのちのふるえ

 

この季節、外へ出ると、大瀑布のようなる蟬の声が襲ってきます。
指でつまめるほどの体が発する、
何万年のまえからつづく、
小さないのちの大合唱。
猛暑酷暑は身にこたえますが、
耳を突き破るような壮大な自然の音楽は爽快そのもの。
つとめを終えた蟬たちが、そろそろ地面に身を横たえ始めました。
ころんと静かの貌に見とれてしまいます。
つまめば、
いのちが抜き去られ、いかにも空っぽ、のものあり。
かと思えば、
いのちのちからが充ち溢れ、
指先に伝わってき、
静謐の時が辺りを支配するかのようなものあり。
いのちが黙って歩いていきます。

 

・昼餉終え風鈴の音の幽かかな  野衾