男子中学生が歌う「糸」

 

ご覧になった方も多くいると思いますが、
YouTubeで「男子中学生 糸」
で検索すると、
2015年11月に収録された動画がアップされています。
体育館でしょうかね。
壇上に立った男子中学生がザワつく在校生たちを前にしておもむろに歌いはじめます。
再生回数は現在まで、すでに1300万回以上。
わたしもときどき見て聴いています。
見るたびに涙がこぼれます。
プロの歌手でなく、
プロの歌手でないからこそかもしれませんが、
その堂々とした歌いっぷり、
立ち姿、声、みんなの前で歌おうと思った少年のこころを想像すると、
ただただ泣けてきます。
レビューを見ると、
みなさん同様に感動したことが分かります。
こんなレビューもありました。
「爺さんを泣かすなよ、余生を思いっ切り生き抜こう。」
どなたが撮った動画か分かりませんが、
粗い画像ではあるけれど、すばらしい歌を聴き、
たった数分のことながら、
こんなふうに見ず知らずの多くの人を感動させる男子中学生の存在が輝きを増し、
その姿を思えば、
また、そのことを通して、
歌の力を改めて感じないではいられません。
話が飛ぶようですが、
ただいまチャールズ・テイラーの『世俗の時代』を読んでいます。
この本は、
ヨーロッパを話題にし、
500年前には信仰をもたぬ生活が考えられなかったのに、
わずか500年の間に、
信仰をもつことが特殊な事象になってしまうほど
大きく変ってしまった、
そのことがテーマになっています。
考えるきっかけをいろいろに与えてくれるいい本ですが、
男子中学生が歌う姿を動画で見、
多くの人のレビューを読むと、
現代に生きる日本人もテイラーが問題にしていることと深いところでつながっている、
キリスト教の信仰と異なるようでありながら、
実はそうでないのではないか、
根は共通しているとわたしには感じられます。
人間のこころの底にある共通の信、また真に触れるようで、
「爺さんを泣かすなよ」
に共感を覚えます。

 

・雲が行く丘の新樹のさやぎをり  野衾