妙案

 

 春泥をそろり墓へと辿り着き

このごろのわたしのたのしみは、昼寝です。
食事した後、机に向かうと眠くなります。
そうなると、なにをやってもダメですね。
頭を振ったり、
両手の親指と人差し指で強制的に眼をカッと大きく開いたり、
アアアアアッと大声を出しても、
ほとんど効き目がなく、
水が高いところから低いところへ流れるごとくに、
自然とゆっくり閉じてしまいます。
いっそ、寝てしまえ!
ところが寝る場所がありません。
どこで寝るか?
どうやって寝るか?
いろいろ、三秒くらい思案した結果、
妙案が浮かびました。
わたしの机と後ろの窓との間には割りと広いスペースがあり、
しかも具合のいいことに、
どの方角からも死角になっています。
必要は発明の母!
発明したわけではありませんが、
横になっていてもどこからも見えず、誰も気づきません。
不意のお客さんがあっても、
「社長! お客さんです!」と声を掛けられれば、
忍者のごとくに「は~い」と言って、
姿を現すことができる。すばらしい!
というわけで、
このごろは、昼の食事の後は、
おもむろに新聞紙を広げ、
その上に「大」の字になって十五分ほど寝ています。
初めてやったとき、
総務の中田が「あれ? 社長? 社長?」と近づいてきて、
倒れているわたし、いや、寝ているわたしを見て、
ギャッ!と叫びました。

 残雪や岩にカモシカ立ちにけり

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