経験をつむとは

 

 プチトマト添へて春日の角煮かな

人間は若いときに生えっぱなしにしておいた
雑草をとりのぞくのに、
一生のかなりの部分をすごす。
この作業がいわゆる経験をつむというものさ。

上の言葉は、
バルザックの小説『幻滅』(田村俶訳)に出てくる
カルロス・エレーラが、
自殺の場所を求めて歩いていたリュシアンに語るせりふ。
『幻滅』ではスペイン人の僧侶として登場する
カルロス・エレーラだが、
実は、同名の僧を殺してその人物に成りすましている
脱獄囚のジャック・コランである。
『ゴリオ爺さん』ではヴォートランとして登場していた。
悪の権化みたいな人物だが、
(それだからこそ)
こいつが出てくると、
物語がやたらワクワクしてくる。
この男に、おのれのしでかしたことを恥じ
自殺寸前だったリュシアンは救われる。
人生は不思議!

 新緑やゴーと消えゆく横須賀線

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