バナナ

 

 花冷えの空に電気の気色あり

いま、南伸坊さんと糸井重里さんの対談集
『黄昏(たそがれ)』を読んでいます。
二段組四〇〇ページもありますが、
おじさん二人が旅をしながら変な話を延々繰り広げます。
少しというか、かなり変なので、
飽きません。
一応、鎌倉変、日光変、東北変、東京変に分かれています。
あはははは…。
ごめんなさい。わざとです。
変は、変でなく、編です。
読んでいて思わず大声で笑ってしまい、
家人に驚かれたことがありました。
ウチの編集長ナイ2は笑い上戸で、
原稿を読んでいて、いきなり笑ったりしますが、
わたしは笑い上戸でありませんから、
そんなには笑いません。
でも、けっこう笑います。
それは措いといて、
南さんが子どものときに、
汽車に乗っていたら
(汽車なので、たぶんボックス席なのでしょう)
向かいに座っている二人連れが、
カバンの中からバナナを取り出したそうです。
南さんは中学生ぐらい。
バナナを見て、食べたいなあと思ったらしいのですが、
向かいの人に、そう思われるのがイヤで、
いきなりコテッと、
寝たふりをしたというのです。
わたしは、そこでツボにはまってしまい、
笑わずにはいられませんでした。
おかしいじゃないですか。
今までふつうに起きていた子どもが、
カバンから現れたバナナを見たとたん、
コテッと寝るわけですから。
でも、分かるなー、南さんの気持ち。
子どもの時ってそうだもんね。
ほしがる気持ちを知られたくなくて、
あっち向いたり、寝たふりしたり。
さて、その後、南さんどうなったでしょう?
寝たふりをしていた南さんの頬が冷やりとしたそうです。
目を開けると、
「はい。バナナ」
向かいの人が南さんにバナナをくれました。
きのうのまるちゃんの
「『坂の上の雲』さっき見てました…」も好きですが、
この話も好きだなあ。

 朧夜やビル溶け一反木綿なり

090530_1901~0001