休日の仕事

 

 壇上の児童まぶしき春祭り

どうしても進めておきたい仕事があり、
日曜日のきのう、九時前に出社しました。
会社には誰もいません。
この頃とっている地元の秋田魁新報を読んでから、
パソコン画面をにらみ、
インタビュー記事を直していきます。
進むこと進むこと!
昼までに、だいぶ捗りました。
部屋に鍵をかけ、ビルの外へ出て伸びをし、
それからいそいそと太宗庵へ。
「ちわー」と入ると、
入口近くに初老のお客さんが一人。
女将さんが、「あら、どうしたの?」と訊きますから、
「女将さんに会いたくてさ」など言い、
いつもの座敷に上がりこもうとしたら、
厨房から大将が、
「お、どうしたの? 日曜日だっていうのに?」と言うので、
「大将に会いたくってさ」と答えましたら、
お茶を運んできてくれた女将さんが、
それを聞きつけ、
「あら、そういうことね」と、
少々ご機嫌ななめな笑顔を見せてくれましたから、
「二枚舌はいけませんね」と申し上げると、
女将さん、首をコクンとまた笑顔。
こんな会話を楽しめるのも、
仕事が捗ったればこそのことで、
わたしは、いつものせいろ蕎麦とカレーうどんを頼みました。
ここに来ると、
どうしても蕎麦とうどんを一緒に食べたくなります。
お客さんで、お店がだんだん混雑してきました。
やがて、中年女性三人が座敷に上がりこんできて、
ぼくを取り囲むようにして座り、
一つしかない座敷のこととて、窮屈で、
身を縮めて食していましたら、
左頬の内側を噛んでしまい、
こんちくしょー! と自らを責め、
でも、何事もなかったかのように食事を終えました。
三人の女性のうちの一人が、
キンキンした声の持ち主でイラッとしましたが、
わたしが帰ろうとして、座敷を下りる時に、
「ありがとうございました」とキンキンした声で丁寧に
言ってくれましたので、
キンキン声も悪くないなと思い直しました。
会社に戻ってスパートをかけ、午後五時まで。
電話も鳴らず、平日の1.5倍ほど進んだでしょうか。
充実した一日でした。

 スポフェスの子等のびのびと五月かな

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この頃の天気

 

 傘置きてまた傘を買ふ五月かな

雨が降り続いてくれたら、
それはそれで、
梅雨だからなーと、あきらめもつきます。
この頃の天気は、こちらの行動をからかうように、
降ってみたり、晴れてみたり、降ってみたり、
また晴れてみたり…。
コノヤロー、いったい、どっちなんだと。
天気に文句言っても、仕方ありませんが。
きのうは、木曜日で、気功教室の日でした。
終って外へ出たら、雨。
あちゃーと思いましたが、
本降りでもないし、
というか、傘を持っていなかったので、
急いで駅に向かいました。
向かいながら、
保土ヶ谷の駅に着いたら、
タクシーで家まで帰ろうと考えました。
タクシーの1メーターよりビニール傘が安いわけですが、
なんとなく、買いたくない。
保土ヶ谷駅に着いて外を見たら、
行き交う人びとが傘を差していません。
お。止んだか!?
思わず、ニンマリしてしまいました。
タクシー乗り場に向かうことなく、
保土ヶ谷橋方面へ歩き始めました。
ナベちゃんのお店、明日、大丈夫かなー?
予約でいっぱいかなー?
などと、今日のことを考えながら歩いていると、
バチバチと、頭の上で音がするではありませんか。
パナマ帽に雨があたる音です。
チッキショー!!
切れそうになりました。
降るなら降る、降らないなら降らない。
どっちなんだ、こんちくしょーめ!
気功で穏やかになった心が、
天気のせいで、
あっという間に掻き乱されてしまいました。

 日と雨とあざなへるごと五月かな

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二度美味しい

 

 雉鳴くやふるさとの山遠くあり

食べ物の話ではありません。
きのうも引き続き、
『三島のジャンボさん Mr. グラウンドワーク』の
インタビューをまとめていました。
テープ起こしした原稿の枝葉を取り、
大きなうねりに向かって整理していくわけですが、
それをしながら、
楽しかったインタビューの時間が、
ありありと再現されてきます。
こちらの質問に対して、
ちょっと答えがずれていると思われる箇所があり、
何度もそこを読み返します。
そうすると、
話し手が質問をどうとらえたかが、だんだん見えてきます。
一つのエピソード、物語を通して
質問に答えてくれたことがよくわかります。
人を理解することの難しさ、醍醐味を感じさせられます。
二度美味しいと言いたくなる所以です。

 二日目も姿は見えず雉の声

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スポフェス

 

 スポフェスの腕振り一等りなぴかな

スポーツフェスティバル、略してスポフェス。
仲良くしている近所のりなちゃんが、
スポフェスで八十メートル走るというので、
短距離走のコツを教えました。
なんたって「みうらちゃん」は、
高校と大学で陸上部でしたから。
しかも短距離。
子どもたちが一所懸命がんばっている姿は感動的で、
加齢のせいか、見ているだけで、
すぐに涙腺がゆるんでしまいます。
秋田の両親は、
とくに趣味といって無い人たちですが、
わたしの弟が顧問をしている地元中学の
女子バスケットボールの試合を見にいくのが唯一趣味で、
先週は五城目、今週は山本郡、来週は田沢湖と、
小旅行を兼ね、おにぎりをもって出かけていきます。
練習試合は、授業のない土・日にやるようです。
応援に駆けつけて応援しながら、
逆にエネルギーをもらって帰るのでしょう。
スポフェスの日、晴れるといいなぁ。

 鍼灸院尻に針刺す五月かな

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先生の罪

 

 青々とミヤマイラクサ刺しにけり

グラウンドワークという、
イギリス発祥の活動があります。
行政と企業と地域の人びと、
それをつなぐNPOが一体となった取り組みで、
日本では、グラウンドワーク三島が先鞭をつけました。
その事務局長さんが、秋田出身の渡辺豊博さんです。
今、『三島のジャンボさん Mr.グラウンドワーク』という
本を編集していますが、これがすこぶる面白い!
渡辺さんが秋田にいたのは六歳までで、
父親が亡くなったのを機会に、
母のふるさとである三島に帰りました。
小学校に入ってから、
一年と二年のときの担任から、
「田舎者」「父親のいない子」と差別され、
母親が仕事で忙しく、渡辺さんは、
服をあまり着替えなかったそうですが、
担任の先生は、「豊博、お前、臭い!」と、たびたび言ったそうです。
渡辺さんの心は、だんだんねじれていきます。
わたしは、渡辺さんから直接その話をうかがい、
もらい泣きならぬ、もらい怒りで、
ワナワナと体が震えました。
小学二年のあるとき、体育の授業が終って教室に戻ると、
「財布がない!」と騒ぐ女の子がいました。
先生は、渡辺さんに向かい、証拠も何もないのに、
「豊博、お前がやったんだろう!」と言ったそうです。
財布を盗まれた女の子に訊くと、
どういうわけか、その子も、
「豊博君の動きがおかしかった」と答えました。
実はこれには裏があり、
ガキ大将だった豊博君をよく思わない別のグループの男の子が、
女の子を脅して、豊博君を陥れようとしたことでした。
渡辺少年がどうしたかといえば、
仲間を使って犯人を探し出し、ボコボコにしてやりました。
それだけでなく、
仲間とともに、川原の石を大量に集め、
バケツに入れて学校のそばに隠しておき、
一ヵ月後を期して、夜、校舎の窓ガラスを友だちと二人で
二時間かけ全部割ったそうです。
宿直の先生もいたそうですが、
渡辺さんの迫力に声をかけられなかったのだとか…。
渡辺さんがインタビューに答えておっしゃるには、
先生を許せなかった、個人的にどうということよりも、
教師として、人間として失格だろうと。
その通りと、わたしも思いました。
学校の窓ガラスを全部割るという行動に、
渡辺少年の深いかなしみが隠されていたと思います。
そんな事件もあって、
渡辺さんは、母親と一緒に、
亡くなった父の親族のいる石川県に行くことになります。
先生の仕事というのは、
良くも悪しくも、
子どもの心に深い印象を与えるものであることを、
この話から改めて考えさせられました。

 つぶすごと部屋の香清し山椒かな

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山菜料理

 

 分け入りてアイコいただく祖母の山

子どものときは、
山菜料理を食べても、不味くはありませんでしたが、
とくに美味いとも思いませんでした。
亡くなった祖母が「山菜の先生」と呼ばれていて、
乞われると、いっしょに山に連れて行くほど、
山をよく知っていましたから、
家族で食べるだけでなく、
隣町で市の立つ日には売りに出すぐらい
採ってきたものです。
よく食べましたから、あたりまえになって、
ありがたみが分からなかったのでしょう。
いろんなものを食べてきて、
いま山菜をいただくと、単純に、
なんて美味いんだろうと思わずにはいられません。
サッと茹で、醤油かポン酢かマヨネーズをかけるだけで、
これぞ料亭の味! といっても大げさでない、
それぐらい美味い。
山菜の美味しさを知るために、
他のものを食す必要もあったのでしょう。
東北地方で広く採れるアイコは、
わたしの地元ではアイノコと称することが多いのですが、
正式名称は、ミヤマイラクサというのだそうです。
刺草と書いて、イラクサ。
字のとおり、手袋をしてないと、
チクチクと痛くて敵いません。
なのに、熱を通すとチクチクが消え、
食べると、ほんのり苦味もあり、
なんとも言えず美味しい。山の味です。
アイコ、アイノコの名前には、
土地の人の気持ちが表されているように思います。

 宅配便山のかほりのアイコかな

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ございます

 

 東北道岩魚焦がす塩も好し

耳にはあまり自信がありませんので、
断定的な物言いは避けなければなりませんが、
絶対に言っていないと思うんですよね。
そんなことないか、とも思いますが、
振り返るたびに、
いやいや、絶対に言っていなかったと思うわけですよ。
前置きが長くなりましたが、
数日前、出社後間もなくトイレに入りました。
同じフロアの工事関係の会社に勤める社員が
洗面台に向かっていました。
黄色い制服を着ているので、すぐに分かりました。
わたしは、
「おはようございます」と声を掛けました。
すると、
わたしの「ございます」に唱和するように
同時に「ございます」。
ふつう、「おはようございます」と声を掛けられたら、
(あ、どうも)みたいな、
ほんの気持ちだけ間が空いてから、
時間差で「おはようございます」となるところ、
わたしが「おはようございます」と言い終わるのと
ほぼ同時に「ございます」。
だから、わたしが思ったのは、
冒頭の「おはよう」を省略して、
「ございます」だけ言ったのかなと。
でも、そんなことをするだろうかとも思うわけですよ。
そこでハッと気づいたのは、
「ですよね」という言い方。
相手が何か言ったことに対して同意する場合、
言葉を発した人の苦労はそっちのけで、
それをぜ~んぶ省略し「ですよね」だけ。
それと同じで、
「おはよう」と聞いて、その言葉を省き、
「ございます」だけ言ったのでは??
それとも。
トイレに人が入ってきたことに気づき
(洗面台に向かっていましたから、
鏡でそれと気づいたであろう事は想像するに難くありません)、
「おはようございます」と言った、その言葉が、
わたしの「おはようございます」と全く同時だった??
そのほうが事実に近い気もしますが、
「おはよう」は聞こえなかったんだよなぁ。
すぐ近くだったし、
いかに耳が悪いからって言っても、
そこまで酷くないしなぁ。
その人を探して訊くのも変だし。
…というようなことがありました。

 三時過ぎ海苔バリバリと食ひにけり

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