財布

 

 花冷えの雨をくぐりて出社かな

先日、小椋佳さんのコンサートに行ったことは
すでにここに書きましたが、
コンサートのテーマは、
最近出したCDのタイトルにちなみ、「邂逅」でした。
かいこうと読みます。
偶然の出会いとか、めぐり合いという意味ですが、
ふつう好い意味でつかわれるけれど、
偶然の出会いは、いいものばかりとは限らない、
なんて前置きしつつ、
小椋さん、これまでの人生で、
四度ほどカバンを盗まれたことを話してくれました。
四度全部についてではなく、いちばん最近のもの。
新幹線で盗られたそうです。
「人を見る目があるんでしょうねえ」などと、
小椋さん、とぼけたことをおっしゃっていました。
そうおっしゃったあとで歌った歌が
「めまい」だったのには笑えました。
ところで、わたし自身のことですが、
二日つづけて財布を、
盗られたのではなく、忘れた夢を見ました。
わたしは現実にもよく忘れ物をします。
さて、どんな夢かというと…
インドの山の上で楽しいひと時を過ごしていたわたしは、
下で山形の工藤先生を待たせていることを思い出し、
大急ぎで山を駆け下りました。
先生お待たせしました! と近寄ったのですが、
頂上の店に財布を忘れたことに気がつき、
それには日本へ帰るための切符も入っていたので、
先生に訳を話すのもそこそこに、
急いで取って返しました。
ところが、
下りるときは気づかなかったのですが、
坂の途中、いくつもの分岐点があり、
どちらの道を上ったら
頂上にたどり着けるのかがさっぱり分かりません。
間違えた道をえらび、
崖の上から大きな石が
頭上をかすめて落ちていったりします。
また分かれ道のところまで戻らなければなりません。
行ったり来たりを繰り返し、
途方にくれてしまいました。
けさ眼が覚めて、まず一番に、
カバンの中の財布を確かめました。
ちゃんと、ありました。

 とぼとぼと歩く男を山笑ふ

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