長田弘さん

 

 猫じゃらし我が身一寸法師かな

詩人の長田弘さんの本を、わたしは学生の頃から読んできました。
『ねこに未来はない』『読書百遍』『私の二十世紀書店』
『記憶のつくり方』『感受性の領分』等々。
出版社を始めて、いろいろな方に原稿をお願いし、
いただいてきたのに、
どうして長田さんにお願いしなかったのか、
自分でもなんだか不思議です。
お願いする時期がやっと来たということかもしれません…。
『読書百遍』と『私の二十世紀書店』を、
わたしは三度読みました。
二度読んだ本は他にもありますが、
三度読んだ本は、この二冊だけです。
(絵本は除きます)
『私の二十世紀書店』の巻末に、
本のなかで取り上げている書のリストがあり、
それに○印をつけ、宿題をこなすように読んでいきました。
懐かしい思い出です。一冊一冊読むことで、
二十世紀という、
それまで宙に浮いてでもいるように感じられた言葉が、
急に親しいものとなり、いろんなひとが呼吸して
歴史をつくっているのだと感じられたものです。
長田さんの本を読むと、こころがやわらかくなった気がし、
ああ、この感じで本を読みたいなあと思うのです。
そうして、書棚にあるまだ読んでいない本とか、
一度読んだけど、もう一度読んでみようかなと思う本を手に取り、
椅子に腰掛けてゆっくり頁をめくります。
そうすると、前と同じ文字を読んでいるはずなのに、
前はそんなことなかったのに、いま初めて読むように、
ことばが胸に沁みてきます。
長田さんの本が効いたのでしょう。
今度の春風社目録新聞のテーマが「紙の本」に決まり、
長田さんにぜひこのテーマで詩を書いていただきたいと思い、
手紙を書きました。
昨日、お原稿をいただきました。
「ベルリンの本のない図書館」がそのタイトルです。
正直、体が震えました。
今日もまだ、長田さんの詩の余韻に浸っています。

 鎌倉へ鉄道草の靡きけり

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