Archives : 12月, 2009

うれしかったこと

 

 遠来の客に注ぎ足す冬ビール

先週日曜日にひらかれたトークイベントで
おしゃべりしたあと、
しばらく休憩時間がありました。
そのとき数名の方が『出版は風まかせ』を
買ってくださったのですが、
ある中年の男性がわたしに近づいてきて、
「よもやま日記を読ませていただいています。
今日の案内がでていましたので、来てみました」
「ありがとうございます…」
名前はもちろん、どういう人なのかもわかりません。
でも、ほんとうにうれしかった。
読んでくださる人がいるということは、
書き手にとって、これに勝る喜びはありません。
このひとのためにも、倦まず弛まず、
これからもちゃんと書こうと思いました。

春風社は、
明日30日から明年5日まで、正月休みとさせていただきます。
6日が仕事始めです。御用の方は、6日以降にお願いします。

それでは、どちら様も良い年をお迎えくださいませ。

 朝十枚午後二十枚賀状書く

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毛抜き男とリンゴ女

 

 ふるさとや雪中ふかき三山碑

小説のタイトルみたいですが、実際の話。
道を歩いていると、いろんなひとに出くわします。
電気シェーバーで髭を剃りながら横断歩道を渡る男の話を
ここに書いたことがありますが、
このごろまた変ったひとを目にしました。
ひとりは毛抜き男。
朝、保土ヶ谷駅に向かって歩いていたとき、
商店街を抜けたあたりで、前を行く男性に近づきました。
少し猫背で、後ろから見ても、
歩きながらなにやら顔の辺に手をやっているのが分かります。
追い抜きざま、ひょいとみると、
口元の伸びた髭を毛抜きで抜いているではありませんか。
年の頃、三十代半ばでしょうか。
電気シェーバーの男も面白かったけど、
こちらも相当に面白い。
朝から愉快な気分になりました。
また別の朝、紅葉坂の交差点を渡って、
心臓破りの長い坂を上っていた時のことです。
県立図書館の前の坂を、リンゴを丸齧りにしながら
中年の女性が下りて来ました。
このごろ丸齧りも珍しいのに、
歩きながらですから、相当に奇抜です。
よほど歯がいいのでしょう。羨ましいかぎり!
ここでもまた元気をもらいました。朝食だったんですかね。
出版人としては、
どういう経緯から、歩行中に毛を抜いたり、
リンゴを丸齧りする仕儀になったのであるか、
二人に尋ねてみたい気にもなりました。

 夢を持てと一人好い気の師走かな

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思うこと

 

 さっき行ったトイレに走る冬の朝

今其れ人を愛するに於て一法有り。人工の法に非ず。
姑らく之を循環黙愛と謂はむ。何ぞや。
譬へば此に友十人ありとせん。
我れ静黙以て日に其一人を胸裏に特愛し、
十日にして全部に及ぶ。終りて復た始まる。循環して已まず。
諸友各々亦此の如くす。此れ集団を神愛するの一法也。

人を愛する方法について、新井奥邃が具体的に記している箇所で、
「信感第二」(『新井奥邃著作集』第二巻三二七頁)に
でてくる言葉です。
年賀状を虚礼とよぶ向きもあり、
郵政民営化についてどう考えるかということも無視できませんが、
弊社では、今年も年賀状をだします。
だすとなれば、こころを無駄に用いずに、循環黙愛をもって、
一人ひとりていねいに一言したため送りたいと思います。

 バケヤロー!! 冬空仰ぎ高いびき

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ひとからいわれると

 

 気功の日瞑想破りし咳ばらひ

今週月曜日(12月21日)の読売新聞夕刊
「新刊立ち読み」のコーナーで、
拙著『出版は風まかせ』の書評が掲載されました。
ありがたいことです。
ひとつ気になったのは、「弱小」という単語。
こんなふうにつかわれていました。
「無の状態から何とか編集機を据え、
自宅を事務所にスタートした苦労、
弱小出版社には高額の新聞広告、
在庫書籍の保管問題などで頭をかかえるばかりだが、
尽きない本作りへの熱情が伝わってくる。」
結論部分は、ほんとうにありがたい。
だから、細かいことを気にするなよ、
ケツの穴が小さいな、あはははは…といわれれば
それまでなんですが、
例えばですよ、頭髪の不自由な人が先手必勝よろしく、
みずから「ハゲ」というのと、
ひとから「ハゲ」と指摘されるのとでは、
気持ちのありようが相当にちがいます。
この文章の三行目、
「拙著『出版は風まかせ』の書評が~」にしても、
これがもし、だれかから、
「あなたのつたない本を読ませていただきまして」
などといわれたら、やはり相当に面白くない。
でも、読売新聞の書評のおかげで、
目に見えて売れ部数は伸びましたから、
大人でもありますし、がまんすることにします。ぶちぶち…

 寒空や犬に吠えらる立ち小便

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キズとしての文字

 

 寒さつひつひさびさびと国なまり

活版印刷による文字をじっとみていたら、
紙につけられたキズのように見えてきました。
木につけられたキズから滴る樹液は、香油とよばれ、
ひとのいのちを癒してくれたり、
まずなによりも神への捧げものであったのだとか。
印刷技術を発明したグーテンベルクが聖書を印刷したのが1455年。
550年の時を経て、いま、
活版印刷が世界から消えようとしています。
消えてなくなるものを惜しんでも仕方ありませんが、
グーテンベルクが活版印刷に込めた意味をときどきは思い出し、
刻印された文字から滴る樹液を本からいただいていることを
忘れないようにしたいと思います。

 寒空やサラリーマンの襟のキズ

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三浦衛(みうら・まもる) 春風社代表にして自慢大王&悪ノリ大王。体調のいいときは自らを天才と称し、不調の折はちりあくたにも劣るヤツとしょんぼり。

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三浦衛の本


『カメレオン』
 三人ときどき声にならぬ声を洩らし/とろけ とろけ 唾までとばし/クヂるとナメるとネヂるとチョす…(「鳶」) 自在に色を変え、不意に突き刺さる、軽妙なことばの戯れ。秋田方言満載の詩集。本文は金属活字による活版印刷。


『マハーヴァギナまたは巫山の夢』
 三平佐世夫は、千一夜の夢うつつで女と戯れ、印度に旅し、睾丸を抜かれ、鰐を飼い、横浜を彷徨う。言語の崖っぷちを綱渡りする、めくるめく冒険。本文活版印刷に美麗造本を施した平成の大奇書。


『父のふるさと』
 父の目に映じた故郷の風土、ひと、くらし、農事を、愛惜をこめ描きだす。本文は金属活字による活版印刷。「身と蓋函」に納める。


『出版は風まかせ』
 横浜の出版社「春風社」社長が本づくりと会社経営にまつわるエピソードを豊富におりまぜ、創業から10年を振り返る。