エラ・フィッツジェラルド

 新緑や癒えぬ怒りをいかにせん
 このごろ、このCD(下の写真)をよく聴いています。
 わたしは、悪い癖だと思っているのですが、女性の場合、小説でも音楽でも、顔が自分の好みに合わないとなると、だいたい避けて通ってきました。だから、いくらいいと言われても、宮本百合子は読みません。田辺聖子もほとんど読まない。
 音楽で言うと、ビリー・ホリデーは聴く、アニタ・オデイは聴く、クリス・コナーは聴く、ダイアナ・クラールは聴く、といった具合。聴かないのは、サラ・ボーン、ダイアン・シュア。最たるものがエラ・フィッツジェラルドです。いや、でした。それなのに、このごろはサム・クックと同じぐらいの頻度で聴いています。
 顔について、どうでもよくなったというわけではありませんが、声を聴いているうちに、この人はよほど性格のいい人なんだろうなと、勝手に思ってしまいます。そうなると、けしてタイプではありませんが、親しみの持てる顔だなあと思えてくるから不思議です。
 性格の悪い人は声に出ます。意地の悪い人は、(タバコの場合もありますが)だいたい声がノドに引っ掛かるんですね。いい声の意地悪な人というのは聞いたことがありません。腹でなにかたくらむと声帯がしぼむとか緊張するとか、そういう体の反応があるのかも分かりません。
 とにかく、エラ・フィッツジェラルドの声、歌を聴いていると、いい気持ちになります。音量を大きくするとジャズボーカルの醍醐味を味わえますし、小さくすればしたで、子守歌のようにやさしく包んでくれます。

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