番楽

 

 花火見て体震はす尿意かな

田中優子さんが主宰する明神塾
「江戸のミステリー 源内・直武―江戸・秋田」
の四回目が昨日、神田明神社殿で行われました。
いつもは、
門を入って右手の明神会館で行われるのですが、
この度は正面の御神殿にて。
というのは、
今回のために秋田からわざわざ
富根(とみね)報徳番楽(ばんがく)の皆さんが
駆けつけてくれたからです。
総勢で、三十人ほどいらっしゃったんじゃないでしょうか。
番楽というのを、私は初めて見ましたが、
おもしろかったー!!
豊作への感謝と人びとの慰安のために踊ります。
秋田の民俗芸能として、ながく受け継がれてきたそうです。
笛、太鼓、鉦に合わせ、
仮面を付けた踊り手が次つぎに現れ、
いろんな種類の短い踊りを披露してくれます。
飽きさせません。
二時間が、あっという間に過ぎました。
とにかく、
踊り手の動きと形が変わっていて、
見ているだけで、
こちらの体が次第に浮き立ってくるのが分かります。
踊りがなんだか、かわいいんですよね。
それに、滑稽。
踊り手はみな男ですが、
女の踊りもあり、その場合は、女物の服を着ます。
仮面の力か、男なのに女に見えます。
地元秋田にこんな踊りがあったとは!
灯台下暗しとは、このこと。
近藤良平さんと一緒に踊ってほしいなあ。

 光るほど花火の闇の深さかな

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花火大会

 

 華やぎてやがて哀しき花火かな

昨日は、創業120周年記念
第25回神奈川新聞花火大会だったらしく、
なんの、どういう大会だったかは、
いまネットで調べて分かりました(便利ですねー)が、
そうとは知らずに、
花火大会があることだけを憶えていて、
近所のひかりちゃんりなちゃん一家をお誘いし、
我が家の灯りを落として、
つぎつぎ上がる色とりどりの花火に打ち興じました。
大人はビールを飲みながら。
子どもはジュースを飲みながら。
百年ぐらいの時間を吹き飛ばすぐらいの迫力で、
みんな子どもになって見ていました。

 上がるたび向こう三軒花火かな

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賜物

 

 狂天を冷まして走る夏の雨

『三島のジャンボさん ミスター・グラウンドワーク』
ができましたので、
装丁をしてくださった南伸坊さんの事務所へ
届けてきました。
南さんに装丁をお願いしたのは今回が初めてです。
「いいですねー」と南さん。
南さんの大らかな伸び伸びした発想が息づいています。
なんといっても、
“ジャンボさん”こと渡辺豊博さんの
超特大(表紙から食み出している!)の顔が、
表紙にデカデカと描かれているのですから。
(本人に、そっくり!)
頭の後ろに雲がたなびくほどにデカい。
あ! そうか!
ジャンボさんの顔が富士山になっている!
つまり、そういうわけなのでした。
エジプトはナイルの賜物ですが、
その伝で言えば、
三島は富士の賜物といえましょう。
口絵に入っているカラー写真(橋本照嵩さん撮影)
がまた素晴らしい!

 狂天や傘と扇子が必需品

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一石二鳥

 

 十一時待ち人来り顔を上ぐ

わたしの教師時代の先輩であり、
『釈譜詳節』の訳者である河瀬幸夫先生来社。
下巻の訳稿をお持ちくださいました。
刊行順がやや変則的になりますが、
上巻につづいて下巻、
最後に中巻を刊行します。
十五世紀にハングルで書かれた韓国仏教の古典であり、
文学としても傑作とされる『釈譜詳節』ですが、
仕事として春風社から刊行できることはもちろん、
担当編集者としてのこの本への関わりは、
俗世の騒音をしばし忘れられる趣きがあり、
ありがたいことです。
時間をかけて校閲をしていると、
背筋がピンと伸びてくる気さえします。
昼は、先生と一緒に清泉さんへ。
すっかりご馳走になりました。

 先輩と鰻を食す佳き日かな

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昼寝

 

 解凍のごとき体を炎暑かな

こんなに暑い日が続くと、
九十八で逝った祖父の姿を思い出します。
思い出の祖父は、
ステテコに半袖の下着を身に着けています。
玄関横の、洋間とも呼べないような板の間の
ソファーベッドに横になり、
うちわ片手にパタパタパタと。
大柄の人でしたから、
膝を曲げ、片足にもう一方の足をかけ、
止まる蝿を、
ときどきうちわで追い払ったりしています。
そうこうしているうちに、
どうも眠ってしまうようなのです。
ようなのです、というのは、
洋間とも呼べないような板の間の
ソファーベッドに横になった祖父を見ながら、
夏休みをむさぼるわたしはこっちの部屋にいて、
安心していつも眠ってしまうからです。

 暑き日は暑きが一番!負け惜しみ

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レバニラ炒め

 

 忙中に慈雨を眺めて泥鰌鍋

カメラマンの橋本照嵩さん来社。
橋本さんはレバニラ炒めが好きなので、
橋本さんに敬意を表し、昼、
二人でレバニラ炒め定食六五〇円を食しました。
レバニラ炒めと言ったり、
ニラレバ炒めと言ったりするこの料理、
本来「ニラレバ」だったのが、
「天才バカボン」の影響で
「レバニラ」という言い方が広まったとされる話が、
NHKの番組「みんなでニホンGO!」で紹介されたと、
ウィキペディアに載っていました。
その番組なら、見たことがありますが、
レバニラ談義の回は惜しくも見逃しました。
バカボンのパパがレバニラ炒めが好きだったとは!
そういえば、昨日の夜、
橋本さんの話の中に赤塚不二夫のことが出てきたっけなあ。
バカボンのパパの件、橋本さん知っているかな。

 干天の慈雨を吸ひたる夜の街

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お急ぎのところ

 

 友来り酒瓶もつ手の頼もしき

先週金曜日、
横浜駅で横須賀線と東海道線の電車が、
上下線とも立ち往生しました。
戸塚-大船間の線路に人が立ち入った
ことによるものと、
何度もアナウンスがありました。
わたしは下り横須賀線の電車に乗っていました。
「暑いからなあ」
ひょっと見ると、
耳から毛の生えた中年のおっさんが、
強烈な口臭を辺りに撒き散らしながら
独り言を言っています。
たまりません。
でも、混雑した車内で逃げることも叶わず、
わたしはかろうじて体の向きを変えました。
「暑いからなあ。わかるよ。ぼーっとしていたんだろう」
同じセリフの車内アナウンスが、二度、三度。
そろそろ五分を過ぎたでしょうか。
「なんだよ。
だったら、走ってくることなかったんだよ。
あーあ。
この電車に乗ったのが不運だったってわけか。
しゃあねーな」
車内アナウンスは、
線路に立ち入った人の安全を確認でき次第、
徐行運転を開始すると告げています。
「人に迷惑をかけちゃいけないよ。
学校で習わなかったのかね。まったく。
迷惑かけちゃいけないんだよ、人に」
中年のおっさんの語調はだんだんと強く、
勢いを増していくようです。
車内アナウンスがまた、
線路に立ち入った人の安全を確認でき次第、
徐行運転を開始すると十年一日のごとくに告げています。
「わかってんだよ。わかってんだよ。
何回同じこと言ってんだよ。ったくよー。
いいんだよ確認なんかしなくたって。
だれが確認してくれなんて言ったよ。
好きで線路に入ってんだからさ、そいつ。
引っ殺しちまえ!」
電車はそれから七分後、
約三十五分遅れて横浜駅を発車しました。
「お急ぎのところ、電車が遅れ
皆様にご迷惑をおかけしましたことをお詫びいたします。
電車は約三十五分遅れて横浜駅を出ました。
次は保土ヶ谷ー。保土ヶ谷ー」
ったくよー。

 朝焼けを浴びて酷暑の烏かな

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