冬の蝶

 

凩が吹く朝 ベランダにうす茶色のちいさな

蝶がいた

風にあおられ 右に左に まるでヨットの帆

生きているのか 死んでいるのか

右は否定 左は否定

こんな季節まで どうやっていのちをつないできたのだろう

二度目のコーヒーのための

アルコールランプで熱せられたお湯が

フラスコからロートにのぼる

いったん目を離し

蝶のゆくえを追う

右に倒れ

左に倒れ

きょう一日のすべきこと

を思いうかべたら うんざりし

急ぎアルコールランプの火に蓋をする

死んでいるのか

生きているのか

まずコーヒーを

 

・コーヒーを淹れるルーチン冬の朝  野衾